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#選ばれなかった話をしよう

わたしは、あの日、
世界に選ばれなかった。

忘れもしない。
ヤングカンヌ本戦、結果発表の日。

Zoomの画面に映し出されたスライドに、
JAPANの文字はなかった。

その日は、社内ミーティングやオンラインでのアポがぎっしりと詰まっていて、相方の古林萌実(通称もえみん)とは
別々に結果発表を見ることになった。

Googleカレンダーには「予定あり」と記載。
発表の時間を待つ。

ソワソワはしていた。
でも、やれることはやりきったのだから。

もえみんから、何度か連絡がくる。
本心で言うと、あの時だんだんと緊張が
高まっていたのかもしれない。

こんな時に限って、Zoomの人数オーバーで、
参加ができないというトラブルも起こった。

「事前に確認しないんかい!」と
もえみんにLINEをし、緊張を紛らわす。

各国の、各部門の、
代表がZoomの画面に映し出される。

発表は、プリント部門からだ。

やっと入れたZoomで、
プリント部門のショートリスト(入賞)から
発表されていく。

ショートリストに、JAPANの文字はない。
当たり前だ。
私たちは、その先に立つんだから。

BRONZE、SILVER。
まだまだ大丈夫、
私たちが欲しいのは...。

GOLD。あれ?

あっけなかった。

こんなあっさり、私たちの努力が裏切られちゃっていいんだっけ?

なぜか、不思議なほど悲しくない。
目の前の事実が信じられず、一旦静止する。

10分ぐらい静止したのち、
ぶわっと感情が溢れ出した。

「ごめん」「なんで」「がんばったのに」

選ばれなかったことが現実味を帯びて、
涙が止まらなくなってしまった。

一緒に住んでいるパートナーは、
私の近くでずっと声をかけて
背中をさすってくれた。

実際、私たちは休日無しでデコンや合宿をくり返していて、
代表の中でもかなりストイックに努力していたほうだと思う。

でも、そんなこと関係ない。
選ばれなかったのだから。

明日から、選ばれなかったほうの人間なんだと思ったら、
悲しくてたまらなかった。

人生は、甘くない。
人生は、そんなに簡単には変わらない。

そう言われているような気がした。

でも、くよくよはしていられない。
直後にクライアントとのオンラインアポが
設定されている。

なんで、こんな時に!
もうちょっと落ち込ませてよ。

涙で潤んだ目がそこまで目立たないことが
救いだった。
オンラインでよかった。

その後、落ち着いてから
相方のもえみんとはこんなやり取りをした。

本当に素敵な相方と組めたことが、
何より幸せだったし、
彼女はわたしを一切責めなかった。

本当にありがとう。

あれから月日が経って、
私たちはたまにコンビを組む程度になり
お互いがお互いの領域で、
いい距離感で頑張り合っている。

半年以上、ものすごく近い距離で
クリエイティブしてきたから、
離れてみることでの学びもたくさんあった。

そして先日、彼女はメトロアドで
グランプリを受賞した。

私は、The Breakthrough Company GOが主催するアカデミーの
チーム課題で最優秀賞を獲り、
これから企画の実装までを頑張っていく。

本当の意味で、今こそいいコンビに、
いいライバルになれていると思う。

思えば、「アートとコピー」で出会って
最初の課題で組んだのももえみんだった。

箸にも棒にもかからない結果で、
選ばれなくて悔しくて、
ヤングカンヌでもう一度私たちはコンビになった。

ヤングカンヌ日本代表になれた。
そして、負けた。

でもそれから、わたしたちは
世界に選ばれなかった経験を
「選ばれる結果」に変えてきた。

まだ途中ではあるけれど。

もえみんは、もえみんで。
わたしは、わたしで。

先日、会う機会があり、
もえみんと久しぶりに話せた。

「メトロアドおめでとう!
最近はコンペや仕事はどう?」

「忙しくしてるよ」

「今年もヤングカンヌやる?
もしよかったら、一緒にやってくれない?」

意外と勇気を出して言ったんだけど、
彼女はあっさりだった。

「ヤングカンヌは、
夢ちゃんとじゃないとって思ってるから」

なんだ、畏まった私が馬鹿みたいじゃないか。
でも、それも彼女らしいなと思った。

お互いがお互いの好きな人とコンビを組み、
好きなことにチャレンジできる環境を
切り拓いている中で、
何度も一緒に組めることは当たり前じゃない。

彼女にも、わたしにも、
選ぶ権利があるから。

でも、私もヤングカンヌは
もえみんとじゃないと
意味がないと思っている。

だから、今年も全力で挑む。

あの日、「世界に選ばれなくてよかった」と言えるように。
「世界に選ばれるための、壮大なマエフリだった」と笑えるように。

わたしももえみんも今、
それぞれの道を進んでいる。

※※※

このnoteを書くきっかけをくれたのが、
阿部広太郎さん(@KotaroA)の本でした。

新刊「あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ」をぜひ読んでみてください。

最初は勇気がいるかもしれないけれど、
選ばれなかった話をもっともっと積極的にできる空気が
世の中で育っていくといいなと思っています。
(以下、阿部さんの刊行イベントにて)


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