見出し画像

少子高齢化対策 by 夢野来人

「であるからして、子どもを育てやすい環境、安心して子どもを産める環境を整えることこそ少子高齢化を食い止める最大の策なのであります」

テレビでは、真夏の知事選に出馬する立候補者による討論会が行われていた。

「いやあ、だから老人の考えることは頭が堅いと言われるんですよ。失われた30年を返せなどと言われても仕方ありません。ここは動物の世界を見習うべきです。子育てにお金がかかるからそれを支援しましょうというのでは、税金がかかる一方です。考え方が逆なんです。お金がかかっても良いじゃないですか。それ以上お金を稼ぐ人が夫であれば良いのです。つまり、高収入の男性が複数の女性に子どもを産ませれば良いだけの話。そうです、動物の世界では当たり前の一夫多妻制にすれば良いのです。そうすれば、無駄に税金を使わなくても済むでしょう」
これは、若くていかにも金持ちそうな男性の立候補者だ。

「まったく、男の考えそうなことね。女性の皆さん、こんな前時代的な意見に耳を傾けてはいけませんわ。お金に困らないようにするならば、断然、多夫一妻制の方が優れています。経済力のある男もイケメンだけども経済力のない男も、等しく妻を持つことができます。多くの夫が一人の妻の元へ生活費を納めに来るのです。税金など使わなくても済みますよ。一夫多妻では選ばれた男しか妻を持つことができない。その点、多夫一妻ならば、大勢の男が妻を持つことができる。これこそ、少子高齢化の特効薬となるのです」
これはお色気漂う女性の立候補者だ。

「皆さん、今の世の中は多様性の時代なのです。夫婦の形態なんてどうでも良いのです。多夫一妻制は一見新しそうに感じますが、実は一夫多妻と同じようなもの、ひと握りの女が得をするだけで男にモテない女性にとっては何のメリットもありません。そこで、私は多夫多妻制というのを提案致します。誰でも誰とでも子どもを作ることができるという制度です。生活費は夫の収入の比率により妻に与えられるというものです。皆んなで生んで皆んなで育てるという、これこそ理想の社会です」
何が何だかわからなくなってきた。

「そうそう、多様性の時代なんです。皆さまはどうやって男が女に子どもを生ませるかということを考えているようですが、世の中を見てください。男同士のカップル、女同士のカップルだってあるじゃないですか。それでは子どもが増えないではないかと思われている方、頭を一度リセットしてください。生殖活動と出産を分けて考えれば済むのです。生殖活動は、好きな人が好きな人と思う存分すれば良いじゃないですか。出産も女性が生むしかないと思い込んでいるからいけないのです。私が今考えているのは、成人したら男は精子、女は卵子の凍結保存をしておくようにします。そして、人口動態をみてそれらをマッチングさせます。純粋な試験管ベビーの誕生です。育児はどうするのかと言えば、育児用AIが担当します。ストレスを感じない社会を実現するためにはAIが必要不可欠です。皆さま、ぜひ政治家用AIの私に一票を」


<まとめて読むならこちら↓>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?