頬粘膜がん 202日目 やさしい世界のつくりかた


 頬粘膜癌 202日目。

 血圧 111-80 mmHg
 血糖 - mg/dL (朝食前)
 酸素 98 %
 脈拍 73 拍/分
 体温 36.7 ℃
 体重 70.1 - kg

 かかりつけ医、座骨神経痛の治療の為にリハビリに今日も通う。

 今はまだ病気療養中なのでこうして日中気楽にリハビリにも行けたりするんだが、もしも仕事に就いていたらそういうわけにもいかないんだろう。なんせ、リハビリ室は基本リタイヤした年齢層以上の方が圧倒的多数を占めている。若輩者の僕なんかはすみで小さくなっている。
 仕事もしてないし、日中からブラブラしている生活にも随分慣れてこれはこれで快適なんだから困った物だ。

 仕事に就いていれば、これくらいの症状なら我慢して土曜の仕事が休みの時に医者に行くかなぁみたいな事になってしまう。”これくらい”ってのがなかなかくせ者だ。体の症状があれば医者に行くのは当たり前とも思うが、実際に仕事をしてたとして早上がりして病院に行くとかってのはなかなか難しいものかもしれない。

 同僚がしょっちゅう医者に行くからと早上がりしたりしていると、”これくらい”の基準が厳しくなりがちなのではないだろうか。

 ”同じ契約内容”で勤めているが片方は早上がりが可能で、自分と待遇がかわらないとしたら素直な気持ちでいられるかどうかというを考えると僕自身も怪しい物だ。”ずるい”と感じてしまう心が自分の中に生まれてしまうことがあるかもしれないし、そういう気持ちが自分の周りにもあるかもしれないと考えてしまうかもしれない。”しれない”の多段活用だ。そんなことを思っていると医者に行くという大切な事についての雑音がどんどん増えていき、結局は我慢してしまおうなんて事になってしまう・・・・・・かもしれない。

 じゃぁタイムカードで厳しくチェックしちゃえとかね。でもあんがい人というのは雇用上の待遇を厳しく管理するということについては文句を言いがちだったりする。”そんなに人の事が信じられないんですか?”みたいなコトバが飛び交ったりして。とかくこの世は住みにくいと語ったのは夏目漱石だったか。


 今度、僕は仕事をするようになっても月に1度とか2ヶ月に1度とか確実に仕事を休んだり半休したりすることになる。まぁ職場にはがんであるという事を周知した上で勤める事になるだろうから、そこらへんはある程度理解は得られると思うがそれでも気をつけなくちゃ不満やなんかの引き金になってしまうことだってあるだろう。この不満が表立って出るようなものならまだしも、言葉にもできない隠された不満として蓄積すると恐ろしい。


 僕は先天性の視覚障害があるから、障害者が一般社会で生きて行く上でまわりと軋轢をつくらず、不満をもたれず、穏やかに過ごすことがいかに難しいかというのは骨身に浸みて知っている。障害を持たれている方は大なり小なりそういう経験をしながら暮らしている。障害者が周囲の健常者に優しく接してもらう為には、普通では駄目なのである。とても”良い人”として生きていなければ普通に接してはいただけないというのが世の常だ。

 人に優しくなれる社会とか言うが、そういう事を可能とする精神構造は相当に鍛わった人でなければなかなか実践することが難しい。いや、できる人は難しいと感じる事無くそういう事ができるのだ。で、僕のように凡人的な心持ちだと実践するのが難しいわけだ。むずかしいから憧れる。

蓮の花

 人に優しくするのも難しいが、まずは自分に優しくなれるとか正直になれるとか自体がすでに難しいものね。できれば自分に対してそうありたいと思う。そうすれば人もそうできるかもしれない。そうありたいと思う時間が沢山あれば少しはそれに近づけるんじゃないかなと思ったりもする。


 やさしい世界の最初の1歩。自分に正直になれるだろうか?


 さて、今日も無事に1日が終わろうとしている。

 明日は遠出するのだから早く寝なくちゃね。


 妹達や、その家族に会えるのがたのしみだ。


 今日もいい1日であった。



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