父の医療費控除の準備を始めて気づく高齢化問題

父は人事、総務といった仕事をしていた人でした。娘の前ではおおらかな人ですが、おそらくとても細かい人なんだと思います。

実家払いをした時、父の部屋から大量の医療機関で受け取った領収書が出てきました。しかも、年度で分け、月で分かれている上、足し算した結果まで書いてありました。おそらく医療費控除の準備をし、毎年超えていなかったのでそのままにしていたのだと思います。

そんな父ですが、昨年夏に入院し、退院後そのまま施設へ入居したこともあり、22年度は医療費控除の対象になりそうなくらい病院にお世話になりました。今年はやらねばと、父の荷物にあった領収書を引っ張り出したけれど、7月までしかなく足りません。入院する直前はもう領収書を取っておくとか出来なくなっていたんだろうと思われ、結局持っていたものを足しあげても上限未満だったので、申請を断念。たぶん足りない分を足せば上限超えるんだけど、致し方ない。

さて、2023年。

今年は施設の入居で訪問医療に切り替わったことや、夏の入院に加え、現在いる場所も療養型病院。施設にいた頃と違って、かかる費用のほぼ全てが医療費扱い。そして、施設入居後に常用するようになったオムツ代も医療費控除の対象になる。

8月分まで足しあげたところで50万を超えている。医療費控除の対象になるのは年間10万円以上の医療費で、去年まで対象外だったことを考えると、去年の5倍以上かかっているということになる。

老人の医療費ってすごくかかるというのは知っていたけど、自分の親がそうなる予想はしていなかった。漠然と、いつまでも元気で実家で過ごし、老衰で旅立つくらいのイメージを持っていた。今思うとお気楽だったなと思う。

自分がこの先老いていく際、同じくらい費用がかかるのかもしれないと思うと、ちょっとゾッとする。そして、我が両親のように「決めてくれる子供」は存在しない。そうなった時、私たちは一体どうなるのだろう?誰が私たちの入院先を探し、治療方針に同意するのだろうか?そして、私のように税金を戻してもらう手続きをするため、パソコンに向かって申請するなんてことをするのだろうか?

私には甥姪はいるけど、実はあまり歳が違わない。父の年である88歳に私がなった場合、一番上の姪は15歳差なので73歳。一番下の姪ですら、60代。充分高齢者の域に達している。姪は結婚しているが子供がいるのは1人だけ。未婚の甥姪は自分が60代で万一独身だったら「親の妹」である私の心配などする余裕があるだろうか?ぽちにも甥姪はいるが、元々疎遠な上私同様に歳がそれほど離れていないし、未婚者もいる。頼れるような関係性にもなく、頼るつもりもなさそう。

この先、親族以外の人に判断を委ねられるような制度が出来るのだろうか?もしそんな制度がなければ、私が父の歳になった頃には既に姉達は他界しているだろうから、判断をするのは73歳になっている筈のわたしの姪か、もう少し若い筈のぽちの甥、もしくはその頃には40代後半になっている筈の姪の娘になるのだろう。

恐ろしい。そんなことになったところで、果たして「おばあちゃんの妹」である私のために、何か考えたり動いたりしてくれるものだろうか?姪の娘はその頃人のことを考えられるような状態にあるのだろうか。そして、私が父の歳になる30年後、そんな老人だらけの日本なんだろうと思うと、寒気がするくらい恐ろしい。

今後日本に必要なのは、制度改革と受け皿だなとつくづく思う。父の入院時には身内のサインを散々させられたし、金銭面ではない保証(同意)をした。本人が判断出来たとしても同意がなければ、手術もしてくれないのが今の日本の制度。これは海外もそうなんだろうか?

果たして家族がいない場合ってどうなるんだろう。。と調べると、事前に契約出来る身内では無い人に判断を委ねる組織が既にあるらしい。でも自分の命に関わるような判断だった場合、他人に自分が委ねられるのか?という不安もある。自分の人生は自分で決めてきた自負がある。だけど自分は気づいておらずとも判断が出来なくなっていくことがあるのを、母の認知症を通じて知っている。歳を取るとは、きっとそういうことなのだ。

最後まで誰の世話にもならずに終えられる人は、そんなにたくさんいないものなんだろう。親の姿を見てつくづく感じる。私の両親の口癖は「嫁に行った娘の世話にはならない。」だった。相手の家に嫁ぐのだから、実家の世話はさせないということだ。昔の人らしい発想だし、娘しかいない親の覚悟でもあったんだろうと思う。

ふと、ぽちに老後の不安について言ってみた。一通り私の不安を聞いた後「なんとかなるよ、きっと」とお気楽な返事が返ってきた。そうだった、彼はこういう人。大事なことは真剣に考えるけど、考えてもどうにもならないことは考えない。それが私をホッとさせてくれてきた。今回もそう。

ぽちには元気で長生きしてもらおう。ふと、自分ではなくぽちに丸投げしたくなった高齢化問題。

この先どうなるのでしょうか。

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