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オトナへの階段【なっちの乳がん検診】

 なっちは自分で自分の身体の症状を訴えることができません。

 小さい頃から、機嫌が悪かったりすると『なにが伝えたいんだろう』『どこかが痛いんだろうか』『痙攣の前触れってなにか自覚症状があるのかな』『歯や耳などが痛くてもわかってやれないな』『盲腸なんてわかってやれるのだろうか!?』と様々な不安がよぎっていました。

 身体中を観察して見つけることのできる怪我や異常ならまだしも、身体の中で起こっている異常や病気に気づいてやることは至難の業。

 痛いも痒いも上手に伝えられないなっちは、伝えられないもどかしさに諦めてしまったりせずに、本当に不便な中で一生懸命伝えようとしてくれているんだなぁ、偉いなぁ、我慢強いなぁ、と感心します。わかんなくてお互いイライラなんてことはしょっちゅうですけどね(^^;

 普段からアンテナ高めの我々は比較的異常を見つけやすくはなっていますが、内臓の病気はもちろん、歯痛頭痛などはなかなかわかってやれません。

 二十歳を過ぎると健康診断なども市の助成をいただいて受けられるのですが、その検査さえも、レントゲンやエコーなど一筋縄ではいかない検査種別が多いですよね。大枚叩いて人間ドックを受けようにも、CT、MRIなどはもちろん、カメラ系なども全身麻酔になっちゃいます。

 今後、成人期の階段を登っていく彼女。採血などで見つかる疾患ならいいのですが、画像診断や内視鏡診断でしか見つけられないような疾患の発見はどんどん難しくなってくるでしょう。ことにがんなどは、初期にはまったく症状が出ないので、早期発見するのはとても難しいと思います。

 乳幼児期には乳幼児期の、学齢期には学齢期の、成人期には成人期の課題や問題点が浮き彫りになってくるものですね。これから先もいろいろな課題にぶち当たってそのたびに悩むのだろうなぁ、と思います。

 私が1990年代に勤めていた病院はがんの専門病院でした。ナースになりたてで右も左もわからない頃、あまりにも役立たずで穀潰しとしか言いようのない世間知らずで向こう見ずな若い看護師をなんとか一人前に育てようと奮闘してくださったありがたい諸先輩方、ドクターの皆様に恵まれました。

 そこで、寡黙だけれども思いやり深く、こんな新人相手でも根気強くご一緒に仕事をしてくださった乳がんを専門とするN医師に出逢いました。私の結婚出産やドクターの転勤などの兼ね合いでほんの1年ほどのご縁だったと思いますが、外科病棟で一緒に働かせていただきました。

 そのN医師が約10年位前に、H駅徒歩数分の場所に、この地域に初めての乳腺クリニックを開院されました。

 乳がん検診のハードルが下がり、家事・子育て・仕事に忙しい年代(20代~50代)の女性もきちんと検診を受けやすいように、初診であってもオンラインで気軽に予約ができ、検査で異常なしだった場合も1年後の検診の予約を取ってくださいます。その上、次回の受診日近くにはリマインドの葉書も送ってくださる。職員さんは全員女性。エコーやマンモグラフィーの技師さんも女性で腕も笑顔も素敵な方々です。待合室の雰囲気も良く、クリニック全体で一人でも多くの女性を乳がんという病気から救おうとしてくださっていて、ここ数年、私自身が毎年乳がん検診でお世話になっています。(㊟乳がんは男性にもありますが、ここでは圧倒的多数が女性なので『多くの女性』と書かせていただきました)

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 言うまでもなく、なっちにとって”がん検診”というのはとてもハードルの高い検査です。でも、早くに見つけることが可能ながんはできれば早期発見してやりたい。胃カメラやバリウム撮影などは難しくても、便潜血でスクリーニングできる大腸がん、エコーやマンモグラフィで発見できる乳がんなどはその典型で、医療者側の理解さえいただければ身体に無理を強いることなく検査をお願いできると思っていました。

 【このクリニックとN医師ならなっちを診てくださる】そう思って相談してみましたら『乳がんや卵巣がんの家族歴がないなら30歳までに一度エコーだけでもしておくといいね』と言ってくださいました。

 とはいえ私が一人で連れて行くのも本当に大変な受診です。かといって女性が多いクリニックに男性である父や兄を同伴するわけにもいきませんから、乳腺外来や婦人科外来のお世話になる時は女性のヘルパーさんの同伴をお願いしようと思っていました。今回、30歳まではまだまだ時間があるのですが、いつもお世話になっている『移動支援』の事業所さんが今年7月末に事業を休止されることになり、今後は支援していただけなくなりそうなので、今年21歳ですが思い切って受診してみることにしました。

 時はコロナ禍。電車で出かけるのも憚られます。夫に運転してもらい車で移動です。ヘルパーさん二人とともにいざH駅へGO!久々の移動支援の外出です。慣れたヘルパーさんと一緒に楽しそうにH市の駅前を歩くなっち。

 そして慣れたヘルパーさんの支援をいただいて、母と三人で押さえたりなだめたり(^^; 受け入れ態勢万全で迎えてくださったクリニックのスタッフさんのご配慮をいただいて、無事にエコー検査と医師の診察を終えることができました。

 エコーを見てN医師。『大丈夫やったよ。心配ないからね。気になることあったらまたおいで。がんばって~』と温かい笑顔をくださいました。

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 また一人、なっちの応援団を得た思いです。ありがたいことです。

 なんでも無理だと諦めないで、こちらから理解していただく努力をして、たくさんの方に知ってわかってもらって、どんどん出かけて行ってできることを増やしていこうね、なっち。

 感謝の日々です。

 

笑顔が増えるための活動をしています。 いただいたサポートは、稀少疾患であるアンジェルマン症候群の啓蒙活動、赤ちゃんから高齢者まで住み慣れた地域で1人でも多くの方が笑顔になるための地域活動の資金として大切に使わせていただきます(^^)