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人生革命セミナーの闇 5章: 自問自答と主催者の巧みな立ち回り2

主催者の心理操作テクニック

田中一郎が自問自答を続ける中、セミナー主催者たちは巧みな心理操作を展開していた。その実態に、田中が気づき始めるまでの過程を描いていく。

ある日、田中は大西小悟からの招待メールを受け取った。

「田中さん、特別セミナーを開催します。あなたの人生を更に飛躍させる重要な内容です。ぜひご参加ください」

田中は躊躇した。最近の自問自答で、セミナーへの疑問も感じ始めていたからだ。しかし、何か答えが見つかるかもしれないという期待もあった。

結局、参加を決意した田中は、指定された高級ホテルの会場に向かった。

会場に入ると、大西が満面の笑みで出迎えた。

「田中さん、来てくれてありがとう。今日はきっと特別な日になりますよ」

その言葉に、田中は少し安心した。しかし、同時に違和感も感じていた。

セミナーが始まると、大西は熱弁を振るった。

「皆さん、人生で壁にぶつかることはありますよね。でも、それは成長のチャンスなんです」

田中は、自分の最近の悩みを言い当てられたような気がして、思わず身を乗り出した。

「その壁を乗り越えるには、もっと深いレベルでの自己変革が必要です。そして、それを可能にするのが、今日ご紹介する特別プログラムなんです」

会場が静まり返る中、大西は新しいプログラムの詳細を説明し始めた。

「通常のセミナーの10倍の効果がある特別コース。2週間の合宿形式で、あなたの人生を根本から変えます」

田中は興味を持ちつつも、違和感を覚えた。「10倍の効果」という表現に、科学的な根拠はあるのだろうか。

そして、最後に価格が発表された。

「このプログラムの価格は、300万円です」

会場がどよめいた。田中は愕然とした。「300万...」

しかし、大西の話術は止まらなかった。

「高いと思われるかもしれません。でも、考えてみてください。あなたの人生を変える機会、それはいくらの価値がありますか?」

「今ここで決断できない人に、成功は訪れません。変わりたいと本気で思うなら、今すぐ申し込んでください」

田中は、周りの参加者たちが次々と申し込みをする様子を目の当たりにした。

「どうしよう...」迷う田中に、南由紀子が近づいてきた。

「田中さん、迷ってるの?」

「はい...金額が...」

南は優しく微笑んだ。「お金の心配はいりませんよ。ローンの手続きもサポートしますから」

田中は戸惑った。ローン...。前回のセミナー費用のローンもまだ残っているのに。

そんな田中の様子を見て、大西が近づいてきた。

「田中さん、あなたには大きな可能性がある。それを引き出せるのは、このプログラムだけなんです」

大西の言葉に、田中は一瞬心が揺らいだ。しかし、ふと冷静になる。

「少し、考える時間をいただけますか...」

大西の表情が一瞬曇った。「もちろんです。でも、このチャンスは二度とないかもしれません」

会場を出た田中は、深いため息をついた。頭の中は混乱していた。

帰宅後、田中はじっくりと考えた。セミナーでの大西の言葉、南の態度、そして自分の気持ち。

そして、ふと気づいた。

「これって...心理操作じゃないのか?」

高額なプログラム、時間制限を設けた決断の促し、ローンの勧め。全てが巧妙に仕組まれているように思えた。

田中は、インターネットで「セミナー 心理操作」と検索してみた。すると、驚くほど多くの情報が出てきた。

「FOMO(Fear Of Missing Out)を利用した販売テクニック」
「社会的証明を使った説得法」
「スカーシティ(希少性)の原理を使ったマーケティング」

田中は愕然とした。自分が体験してきたことが、全て心理学的なテクニックだったのかもしれない。

その夜、田中は南にメールを送った。

「特別プログラム、参加は見送ります」

すぐに返信が来た。

「残念です。この機会を逃すと、あなたの成長は止まってしまうかもしれません」

その言葉に、以前なら動揺していたかもしれない。しかし今の田中は、冷静に受け止めることができた。

「ありがとうございます。でも、自分の道は自分で決めます」

送信ボタンを押した後、田中は久しぶりに清々しい気分を味わった。

「これが...本当の自分の声なのかもしれない」

そう思いながら、田中は穏やかな気持ちで眠りについた。

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