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【小説】鳥かごの外は。。。#9

決めてしまってから、どうしようもない不安に襲われていた。

何しろ、まじめに誠実に生きていくことが正しいと思い込んできたのだから、こういう事態になってから、改めてこのままでいいのだろうか?と思ってしまっている。

「今更考えても仕方ないだろ」

そう思っていた。
アキラの家庭は相変わらずで、子供たちにとっては、かなりきつかったかもしれない。
アキラは自分よりも、子供に対してあまり思い入れが無い妻が、理解できなかった。
このままでは悪い方向に行ってしまう
だからと言って家庭の外でやっていいことと悪いことがあるだろう
それも自覚していたが、アキラは完全に自分を見失ってしまっていた

遠い地で暮らす人

遠距離恋愛だからそんなに入れ込めないし、ましてや本気になることなどないだろう。
だからこそ。。。お互いに会いたいという気持ちがあるのなら。。。
そう思ってしまった

リムジンバスを予約してから、もう後戻りするようなことを考えなくなっていた。
行くことだけを考えて、ワクワクした気持ちが強かった

当日
半ば眠ることができなかった
まるで遠足の前日の子供みたい、と自嘲するが、心躍るとはこのことだなと思っていた

朝早く出かけ、リムジンバスの乗り込みもスムーズに完了
バスの中で眠ればいいやと思っていたが、とてもじゃないが寝れなかった。
空港も一人で初めて行くのだから、ちょっと不安だった。

スーツ姿だったのもあり、どうやっても手馴れているようにしか見えないので、思い切って知らないことを聞くなどできなかった。
それでも、戸惑うこともなくすんなり搭乗できた

色々な思いが去来するが、あっという間に離陸し上空からの眺めを楽しんでいる自分がいた。

「ほんと・・・どうかしている・・・」

本気でそう思っていたのか
他人事のように思っただけなのか・・・

思ったよりも1時間というのは短い
あっという間に彼女の住む町に降り立った
彼女の町は空港から電車ですぐのところ

ついてから早速メールをする
アヤはもうすでに着いているとのこと
アヤの待つロビーへと急ぐ

一抹の不安がよぎる・・・

「写真とは別人だったらどうするか」

その時はその時だと、再びワクワク感が支配した

いよいよ、自動ドアの向こうが待合室というところ・・・

アキラは大股でなるべくゆっくりと落ち着いていこうと決めた

出た瞬間、女性が見当たらなかった
中年の男性ばかりと、ご高齢の方々・・・

その中で、一人女性がいて、目を合わせた瞬間に噴出した

いや、笑顔で迎えたかったんだろうが、極度の緊張から安堵したような表情に変わった。
恐らくアキラ自身もそうだったのだろう
二人してニコニコしながら、挨拶を交わす。

写真通りの人で、アキラは安堵していた。
荷物をコインロッカーに預け、チェックインまで観光をする約束だった。

バスで移動してすぐの所に、ショッピングモールがある
そこに移動してお茶をすることにした
昔から知っている幼馴染のように二人とも話が尽きなかった
楽しくて楽しくて仕方がない時間。。。
到着時間がお昼に近かったので、昼ごはんを食べることになった。

アヤの案内で、少し歩いた商店街の先にあるレストラン
デパートの上にあるのだが、平日もあってか人どおりがまばらだった
アヤとの食事も楽しくて、アキラは会いに来てよかったと思った。

そろそろチェックインじゃない?
アヤに促されてチェックインすることにした

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