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【小説】鳥かごの外は。。。#5

どうしよう。。。

気持ちは即答したい気持ちだった。

でも、もともと婚外に否定的な考え方をしていたので、いくら仮想とはいえ踏み込んでしまっていいはずがないという想いも強い。

いろいろと考えていたものの、あっという間に3日が過ぎていた。

あまり待たせるつもりはなかった。本来なら白黒はっきりつけられる性格なのに恋愛は例外のようだ。

更に2日経った。

返事を保留している罪悪感もあり、もう答えを出すしかないと半ば追い詰められた感じでもある。

「迷ったらGo!だよな」

などと都合のいいことを考えてた。

答えがないことが答え。
OK出ししたい衝動に駆られたが、踏みとどまった。

だが、即答で断ることができずに悩んでいること自体が答え、だと思った。

いつものように夜にログインし、相手のアバターが活動を始めるのをじっと待つ。

彼女はほどなくして入ってきたが、肝心の話が切り出せなかった。
そんな意気地のない自分に嫌気がさし、意を決して話しかける。

「あの、この前の話なんだけどさ。」

「うんうん」

「俺の彼女になってくれますか?」

「もちろん!」

アバターが小躍りして、うれしさをアピールしていた。

よかった!!!!

アキラは、まるで自分が結果を待っていたかのような気分になっていた。

なんて可愛いんだろう!

アキラは安堵すると同時に、どんどん彼女にのめりこんでいった。

「じゃぁ、これ」

メールアドレスを教えてくれた。
そこから、メールアドレスでのやり取りが始まる。
アキラはマメなことを自覚している。相手もマメに返してくる。

本当に毎日が楽しくなっていく。。。

もちろん、学生時代以来、恋愛をしてなかったので、久々に恋愛モードに入った感覚がなんとも言えず、浮き立ってワクワクしていた。

これが俗にいう「地に足がついてない」ということなのか?

アキラは自分だけは違うと思い込んでいた。それほどのめり込みはしないと。
不倫で家庭を壊してしまったエピソードがニュースなどで流れたが、自分だけは絶対にばれないようにできると根拠の無い自信があった。

それが落とし穴であることはまだ理解できなかった。

バレるようなことをするからバレるんだ。バレるようなことをしない、残さないようにはできるはず。

そんな甘い考えがアキラの頭を支配していった。
そもそも、その考え方自体がどうなのか???

毎日の朝の挨拶からメールが始まる。そこから一日頻繁にラリーする。
すぐさま、アキラはロマンチストの性格を発揮する。
甘い言葉でラブレターを毎日最初のメールにしたためる。

通勤電車というのは退屈で、思ったほど本の内容も頭に入らず、新聞を読む気にもなれなかった。
アキラにとって、ラブレターを作って送信する時間は、通勤時間を潤すものとなった。

どんな言葉でどんな文章で想いを伝えることができるだろうか?

毎日朝はそれを考えるのが日課だった。
アキラ自身も毎日続くわけないと思っていたが、結局ずっと続くことになる。

相手が喜ぶその時の最高の言葉を紡いで、お互いに満たされていった。

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