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タケウチカズタケ+小林大吾/『前日譚』(アグロー案内 vol.5収録)の感想と妄想

タイトル画像や引用部分は小林大吾氏のブログ『ムール貝博士言行録 - http://diagostini.blogspot.com/ 』より拝借している

音楽の楽しみ方はそれぞれだ。
口に出すほどでもないけど、メモしとこ

小林大吾氏が新作と胸をはる『前日譚/no news is good news』(タケウチカズタケ+小林大吾『アグロー案内 vol.5』収録)を改めて聞いて、その感想を必死に書こうと思う。

なおSNSではご本人たちの公式的な意見も出されているが、極力見ないようにしていたので、食い違いがあっても苦笑してご勘弁願いたい。

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サウンドはシリーズ通して担当しているタケウチカズタケ氏。
近年に珍しいサブキックがきくも、鳴っている間は短く、エッジがきいている。
ハープシコードとギターでファンク的なコードをずっとささえる。
そこにストリングスが加わることでなぜだか希望が盛り上がっているのを感じる。
明日におこることが楽しみで仕方ない、という雄弁に語るサウンドである

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そこに小林大吾氏のリーディングが入る。

わたしは同氏の過去作で、

「音にお邪魔する感覚」
「言葉に音をかぶせる」

といった感覚があった

しかし『前日譚』は一曲としてのまとまりを感じた
小林大吾氏のブログから引用すると

言葉の乗せ方がそれまでの小節単位からフレーズ単位に変わったことで、リーディングの自由度が大きく変わったのです。

ムール貝博士言行録: 扉を開いた先に広がる未知の景色とは
http://diagostini.blogspot.com/2023/05/blog-post.html

とのこと。
それは『アグロー案内 vol.4/ジョシュア』で起こっていたらしい。

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『ジョシュア』にはYoutubeにあがっているライブ・オントローロ2015版と、アグロー案内版がある。
小林大吾氏はアグロー案内版を『新 ジョシュア』と呼んでいる。本当に新しい。

音のハメ方などすべてがちがい、印象すらほぼ真逆に聞こえる。
『新ジョシュア』ではメガネを変えるように鮮明に情景が浮かぶ。
言葉の聞こえ方を変えることで、こんなにも違うのかと驚いた。

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閑話休題。
その流れを組んでの『前日譚』である。

今まで小林大吾氏の曲には
・シニカル
・ウィットにとんだ
といった感触が個人的にはあった
また感想になんとなくついている形容詞でもあった。

しかし『前日譚』では明らかな希望。
どこが希望を表しているかを説明するまでもなく、希望の曲である。

ではなにが起こる前日なのか。
曲中では明確に語られることがないものの、ブログの最後にこう綴られている。

彼は何を待っているのか?

ムール貝博士言行録: 扉を開いた先に広がる未知の景色とは
http://diagostini.blogspot.com/2023/05/blog-post.html

これは小林大吾氏が聞き手に対する質問返しであろう。

歌詞中には、青い鳥ではなく『白い鳩』が登場する。
また喧嘩する夫婦も登場。
ド直球に考えれば、サブタイトルの『no news is good news』(報せがないのが良いニュース)が答えかと思う。

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ただ個人的にはそこにもうひとつ意味を持たせたいと考える
『前日譚』で語られるのは我々であり、小林大吾氏自身のこれからと考えている。

『アグロー案内 vol.1』がリリースされたのは2023年3月10日。
そこから前のCDとなると『the3』を除けば4thアルバム『小数点花手鏡』が2014年7月2日。
ざっくりと、8年8ヶ月8日ぶり、3173日ぶりである

待ったよ、待ったさ。

Youtubeにて活動するも定期的ではなく、『the 3』をふくめたライブもコロナにて強制的に自粛を余儀なくされた。

そこに現れた連作『アグロー案内』は3月から連続して現在までにシリーズは5作目まで来た。

…『アグロー案内』も決まっていない、かなり昔に、ツイッター上で小林大吾氏に「新アルバムは?」と聞いたところ、かなりへそを曲げられてしまった。
今だから笑える話であるが、あこがれの方に直接に聞いてへそを曲げられると凹むものである。

それほどに待ち望んだ新譜・新作が出るのはどれほどうれしいことか!
小林大吾氏の音源そのものがよい知らせで、アグロー案内を毎回楽しみにしているのが『前日譚』である、と改めて主張したい

…もちろん、御本人にそういった意図はないのだろうけれど。

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しかし私には『アグロー案内』のサブタイトルである『How to enjoy getting lost.』(訳:迷子の楽しみ方/迷走の愉しみ方)を超えた先の『新作』や、新 小林大吾が来る予感がする
その気持を『前日譚』と重ねて聴いている

どういった日々であろうと、今日が人生上もっともいい日である
なぜなら行動できるのは今、この場この瞬間しかないのだから、とはどこかで聴いたので勝手に使おう。

もしも曲に反して、明日バッドなニュースが飛び込んでこようとも、白い鳩が来なくとも、小林大吾氏がへそを曲げるかもしれなくとも、明日を期待する今日はいつでもいい日でありたい。

そういった期待を全部背負ったのが『前日譚』という曲であり、タケウチカズタケ氏と小林大吾氏が提示する『How to enjoy getting lost.』であり、その迷った先にあるモノだと、私は感じる。

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今日は未来の『前日譚』である。

アグロー案内 vol.5


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