「#ちむどんどん反省会」は批判かイジメかという記事の危うさ

『「#ちむどんどん反省会」は批判かイジメか』

2022年8月6日、『「#ちむどんどん反省会」は批判かイジメか』という記事が東洋経済オンラインとYahoo! JAPANで配信された。

ざっくりまとめると「ドラマの感想でもイジメにつながる誹謗中傷のツイートはやめよう」という主張と思われるが、それをわかりやすく説明することよりも別の目的に重点が置かれている印象を持った。それが、以下の2つの印象操作である。

印象操作①「#ちむどんどん反省会」のツイートには個人攻撃が多い
印象操作②「#ちむどんどん反省会」のツイートは傲慢で悪意がある

印象操作①「#ちむどんどん反省会」のツイートには個人攻撃が多い

記事の中から個人攻撃に関する記述を抜粋する。

もちろん、まっとうな批判の声もありますし、それは今後のドラマ制作における貴重な意見になりうるものでしょう。しかし、実際は「批判を超えて個人攻撃が目立つ」という状況であり、朝ドラは平日週5日放送(土曜は総集編)されていることから、その様子は学校や職場でのイジメに近いムードを感じさせます。

次に「#ちむどんどん反省会」に書かれたイジメの疑いがあるものをあげていきましょう。
(該当ツイートの文を列挙しているだけなので省略)
多くの人々が個人に向かって厳しい言葉をぶつけている様子がわかるのではないでしょうか。

「批判を超えて個人攻撃が目立つ状況」「多くの人々が個人に向かって厳しい言葉をぶつけている様子」と主張するなら、“目立つ” や “多くの人々” を裏付けるデータを示すべきだが、その記述はなく極めて主観的に「#ちむどんどん反省会」のツイートには個人攻撃が多い印象を与えている。

印象操作②「#ちむどんどん反省会」のツイートは傲慢で悪意がある

記事の中から“傲慢”や“悪意”を含む記述を抜粋する。

そもそも「#ちむどんどん反省会」の“反省”というフレーズは、「われわれが教えてやるから反省しろ」「見てやっているんだからいいだろ」という、ごう慢さが表れたもの。ツイートしている人々ではなく、俳優やスタッフに反省させるためのものです。まるで自分が正義と決めつけたような「反省させてやる」という発想がイジメの加害者そのものではないでしょうか。

以前から存在する「朝ドラ作品名+反省会」という定番フォーマットに過ぎない「#ちむどんどん反省会」を「ごう慢さが表れたもの」と決めつけ、さらに「イジメの加害者そのものではないでしょうか」とイジメと結びつけている。

もちろん、傲慢さが表れたイジメのようなツイートもあるかもしれないが、実情を知らない人が読めば「#ちむどんどん反省会」のツイート全体がそうであるかのような印象を受けかねない。

これを書いている私自身、『ちむどんどん』に思い入れがあるわけではありませんが、それでも「#ちむどんどん反省会」のツイートを見ているうちに、どんどん暗い気持ちになっていきました。悪意前提で書かれたものは、ただ見ているだけでも精神的なダメージを負ってしまうものなのです。

これも「#ちむどんどん反省会」のツイート全体が悪意前提で書かれたものという印象を読者が抱きかねない文章である。

前述の個人攻撃が多いという印象操作は対象のツイートを限定していると読み取る余地があるだけましで、こちらの方は「#ちむどんどん反省会」のツイート全体に対する印象操作になっている点が悪質である。

なぜ「#ちむどんどん反省会」が盛り上がってしまうのか

「#ちむどんどん反省会」で検索して「話題のツイート」の投稿に目を通せばわかることだが、ほとんどがストーリー展開に対する批判である。

理解に苦しむ唐突な言動や整合性が取れない展開、御都合主義の問題解決、掘り下げるべきエピソードに時間をかけない一方で大した意味がないエピソードに時間をかけすぎる配分のアンバランスなどなど、重箱の隅をつつくまでもなく、ただ見ているだけで気になる点がどんどん出てくるのが「ちむどんどん」である。

その状況が延々と続いているから毎回「#ちむどんどん反省会」のツイートが多数投稿され、共感できるからこそ「いいね」が増えていく。稚拙で粗が目立つ作品だから自然に起きていることであり、「火のない所に煙は立たぬ」だし、「現象には必ず理由がある」。

「#ちむどんどん反省会」でツイートしている人の思いはそれぞれだろうが「伝統的な朝ドラがこのストーリー展開でいいと本気で思っているのか」「せっかく朝ドラに出演している俳優さんたちがかわいそう」などの“憤り”ではないかとドラマファンの一人として想像している。

良質な作品を見たいドラマファンは、好き好んで「#ちむどんどん反省会」のハッシュタグで投稿しているわけではないだろう。むしろ、そんなハッシュタグのツイートなど存在しない作品を制作してほしいと心から願っているはずだ。そこには傲慢さや悪意、イジメの考えなど微塵もない。あるのは、素敵なドラマを視聴者に届けてほしいというささやかな願いである。

『「#ちむどんどん反省会」は批判かイジメか』という記事は、「#ちむどんどん反省会」のツイートへの印象操作によってドラマファンを傷つけた。一方的に決めつけて相手を悪者にする。それこそ「イジメの加害者」であり「悪意前提で書かれた記事」であろう。ブーメランになる記事は共感を得られない。

【参考】「朝ドラ作品名+反省会」のハッシュタグの歴史

この記事を書く過程で、朝ドラ反省会のハッシュタグの歴史がわかる記事を見つけたので以下に抜粋する。

朝ドラ反省会のハッシュタグは、2015年度前期の「まれ」のときから目立ち始め、2016年度前期の「とと姉ちゃん」や2018年度前期「半分、青い。」の放送時もなかなかに盛り上がってしまっていた。傑作と言われた前作「カムカムエヴリバディ」のときでさえあった。

 そもそもこの「反省会」というハッシュタグはいつ生まれたのか。批判を目的として「ちむどんどん」の放送開始後に作られたと思っている人も多いようだが、朝ドラファンのあいだでは以前からおなじみのタグなのである。

 反省会タグが目立つようになったのは2016年前期の「#とと姉ちゃん反省会」あたりから。それ以降、「作品名+反省会」というフォーマットが定番化するようになった。それ以前の作品でも、古くは2012年後期の「#純と愛反省会」などが見受けられるが、どうやらそれらのツイートは反省会タグが広まった2016年以降に、過去作品をさかのぼる形で作られたようだ。

 ともあれすでに6年以上の使用歴がある反省会タグ。かなり評判の良かった前作の「カムカムエヴリバディ」でさえ、「#カムカムエヴリバディ反省会」を付けたツイートはそれなりの数がつぶやかれていた。

【参考】「#ちむどんどん反省会」を取り上げた他の記事

この記事を書く過程で、「#ちむどんどん反省会」のハッシュタグを取り上げた記事をいくつか読んだが、その中では以下のものが主張がわかりやすく納得できる内容だった。


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