見出し画像

#6 マイファミリー(2022)-救出シーンでの濱田岳の無表情が怖すぎる

「TBS日曜劇場のクォリティが下がってきたのでは!?」と感じていたあの頃、第1話の最後の5分間で「日曜劇場復権」を強く感じさせられた良作でした。翌年の年末年始に、全作が一挙に放映されたことで、多くの視聴者に愛されていたことが実証されました。

番宣の段階では「見飽きた誘拐もの」くらいの印象しかありませんでした。実際、第1話の終盤まで、馴染みの光景(音声を変えた犯人からの指示がコロコロ変わるパターン)が繰り返されたため、『視聴断念』のフレーズが脳裏をよぎりました。また、交渉最後の質問(こどもが大切に感じている旅行先)が出された瞬間、「この事件の主犯は子どもでは?」というネタバレに近い推測が成立してしまい、残り9話への期待感が薄れてしまいました。

それにもかかわらず最後まで楽しめたのは、資金力にモノを言わせた、TBS独特の豪華なキャスティング(笑)が大きかったと思います。とりわけ、他ドラマなら主演を張れる大物俳優(二宮和也、多部未華子、賀来賢人、濱田岳、松本幸四郎、玉木宏)が惜しげもなく次ぎ込まれたことによって、家族内だけでなく家族間の確執がよりリアルに感じられました。二宮和也さんの苦悩を示唆する表情、多部未華子さんの感情の起伏の大きさには、目を見張るものがありました。

関係性の深い3家族に誘拐事件が飛び火し、犯人像がつかみづらくなったことも、人気の要因だと思うのですが、個人的にこのドラマのMVPは濱田岳さんだと感じています。複雑な家庭の事情を隠しつつ、他の登場人物だけでなく視聴者を騙し切った前半の演技は見事でした。鳴沢とともに被害者(友果ちゃん)を救出するシーンを再確認したところ、主犯の東堂(濱田岳)の無表情が背後に映り込んでおり、寒気を感じました。

逆に後半2話は展開が早すぎて、情緒不安定になってしまいました。「東堂家のくだりはもう少し丁寧に描いてほしかったなぁ」とか、「初回以降まったく事件に絡まないサンド・富澤が怪しすぎるやないか」とか、「最終回の展開が速すぎる!」とか、ツッコミどころ満載でした。ラストシーン(鳴沢家族の海岸を歩くシーン)に癒されながらも、PTSD、大けが、死亡に見舞われた3人の子どもたちが超絶不憫で、「マイファミリー」というよりも「家族残酷物語」というタイトルの方が相応しいように感じました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?