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#110 あまちゃん(2013)-天才脚本家・宮藤官九郎の集大成

NHKアーカイブズ紹介文

2008(平成20)年、高校2年生の天野アキは、母の故郷、岩手県・北三陸に移り住む。初めて会った祖母の影響で海女を目指すことに。挫折と奮闘ののち地元アイドルになったアキは、やがて東京に出て本格的にアイドルを目指す。しかし、東日本大震災が発生。アキは再び北三陸へ戻る。小さな町の愉快な人々とヒロインの笑顔が元気を届ける人情喜劇。

不世出の名作

朝ドラ、大河ドラマ、民放ドラマすべてを含めて、「最もよく出来たドラマ」ではなかろうか?「タイガー&ドラゴン」や「いだてん」で喫煙や男尊女卑を描き続けてきた天才脚本家・宮藤官九郎がその悪いクセを捨て、3世代(地下アイドル推しの中高生、1980年代のアイドルブームを知る親世代、戦後のアイドルブームを知る高齢者)のために特別に書き下ろされた、15分×156話の超大作。あらゆる場面に張りめぐされた伏線が絶妙のタイミングで回収されていく、その完成度が高く、視聴すればするほど味が出る分、何気に視聴した人の視聴意欲を削ぎかねない複雑なドラマでもありました。

3世代に受け継がれるバトン

地下アイドルに憧れる効力感の低い天野アキ(能年玲奈)、アイドルを目指すも影武者で終わる天野春子(小泉今日子)、戦後の漁師町のアイドルだった天野夏(宮本信子)、アイドルとしての素養に恵まれながらも地元から抜け出せない足立ユイ(橋本愛)との関わりを通して、癒されていく北三陸の人々、アメ横の仲間、被災者の姿が印象的でした。出演者は多岐に渡るのですが、すべてのキャラに愛すべき人格が設定されており、埋没してしまいたい世界観がそこにありました。

北三陸編、アメ横編、震災編でそれぞれでナレーターも務めたお三方

一番好きなシーン

いろいろあるのですが、一番感動したのはアメ横編の終盤、映画の主題歌を録音するためのスタジオで、キーパーソンすべて(能年玲奈小泉今日子薬師丸ひろ子古田新太)が勢ぞろいするところです。緊張感とともに、天野春子(小泉今日子)と鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の和解のシーンに泣けました。一方、GMTの凱旋コンサートのポスターの日付(3月11日)にはゾッとしましたが。。。

ドキドキしたわ

天才脚本家の締めくくり方

最終週はお座敷列車での「潮騒のメモリー」がメインであり、アキちゃんとユイちゃんが震災の爪痕を残すトンネルを走り抜き、灯台で立ち止まるところで『完』となります。感動的でありながらモヤモヤ感を残したまま、年末の紅白歌合戦であらゆる伏線がすべて回収されました。北三陸から抜け出せなかったユイちゃんの東京デビュー、影武者コンプレックスを引きずっていた天野春子の生歌、音痴だと思われていた鈴鹿ひろ美の熱唱、GMTや北三陸の人々と歌った「地元に帰ろう」。すべてが報われた瞬間でした。

めっちゃ楽しそう

こんな精緻なドラマには二度と出会えないのではないかと思います。残念なのは、あまちゃんステージの最後に一瞬登場した、アイドルオタク役ヒビキのやらかし。これで作品自体がお蔵入りしないことを願います。

ヒビキ…

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