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#8 しずかちゃんとパパ(2022)-吉岡里帆にピッタリの代表作

つい最近、NHK(地上波)で放映されましたが、正確には、前年度(2022年)のBSプレミアムが本放送でした。NHKオンデマンドのHPには「舞台は父1人娘1人の父子家庭。父は生まれながらに耳が聞こえないろう者。父の耳代わり口代わりを務めてきた娘が、ひょんなことから出会った男と恋に落ちる。親離れ子離れのてんまつを明るく温かく描くホームコメディー!」と紹介されていますが、もっと深みのある、泣ける人情ドラマでした。

吉岡里帆、はまり役

このドラマでは、思ったことをはっきり伝え過ぎるため、商店街の大人からは可愛がられるものの、同世代の女性からは露骨に嫌われ、遠ざけられるという、しんどい役柄をとても上手に演じられておられました。これまでは小悪魔キャラのイメージが強かったのですが、しずかちゃん役はまさに「適役」であり、「新境地開拓」という印象を受けました。

笑福亭鶴瓶師匠、はまり役

これまで師匠のドラマを見たことがなかったので、番宣の時点では少し不安だったのですが、ドラマ開始と同時に吹っ飛びました。主人公として長い時間、「耳が聞こえず、喋れない役柄」を演じるのはそんな簡単なものではないと思うのですが、落語家として積み上げてこられたスキル(繊細な所作や表情)が凄すぎて、違和感を受けることがまったくありませんでした。

このほかに、しずかちゃんの恋人役で、超天然ボケを演じた中島裕翔さんもいい味を出しておられましたが、それよりも、ぶつかり続けてきた不器用な父娘のわだかまりが溶けるプロセスが秀逸でした。ドラマの終盤、過去の記憶を手繰りながら、他者にはっきりモノを言う習慣が、ろうあ者の父を守るためだったということに気づき、しずかちゃんが自分を受け入れられるようになる瞬間は感動的でした。

全話毎回、泣けるシーンと笑えるシーンが必ず盛り込まれており、コマーシャルなしの1話45分が苦痛ではありませんでした。第38回ATP賞テレビグランプリ、第48回放送文化基金賞、第60回ギャラクシー賞を受賞されたのもうなずけます。もっと評価されても良いのにと感じます。




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