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#139 外事警察(2009)-社会的弱者を洗脳するプロセスを描いた衝撃作

NHKアーカイブズ紹介文

スパイ天国といわれる日本で、対国際テロ秘匿捜査の精鋭部隊として活動する外事警察。その中でも「ウラ」と呼ばれ、表舞台には決して姿を見せない秘匿部隊・外事4課の動きを描く。誰が味方で誰が敵かも定かではなく、協力者(スパイ)との探り合い、テロリストとの壮絶な情報戦の果てに、彼らを待ち受ける危険な罠(わな)。息もつかせぬサスペンスと濃密な人間の愛憎が交錯する、社会派エンターテインメントドラマ。

エンターテイメントにしてはエグすぎる

6話完結だが、とにかく重い。何がウラで、何がワナで、何が真実かわからない。そもそも、フィクションなのか、ノンフィクションなのかもわからない。Wikipediaに記述された外事警察第4課・作業班の説明(対国際テロ捜査を担い、決して世の中に知られることなく秘匿で活動し、時として任務のためには手段を選ばない。)も嘘のようには思えない。第4課が使う卑劣な手段も、海外マフィアとの騙し合いも、情報のリークも、なにがしか、事実に基づいて描かれているような気がしてならず、ひたすら恐怖を感じた。

ウラ社会の闇を背合う主人公はこの男

外事警察第4回の冷酷なリーダー・住本健司を務めたのは渡部篤郎さん。テロリストを逮捕するためならどんな冷酷な手段でも行うことから「公安の魔物」「公安が生んだ魔物」と畏怖されている。ドラマの前半では、テロリストの活動を調べるために、多額の報酬で雇った「協力者」に危ない橋を渡らせる場面が度々描かれる。協力者の大半が社会的弱者であり、テロリストに殺害された際、残された家族に哀悼の意を表するシーンが印象的だった。

映像は常にこんな感じの暗さ

ドラマのポイントは「テロ<協力者への洗脳」

このドラマで異彩を放った協力者・下村愛子役を務めたのは石田ゆり子さん。交通事故のため植物状態となった夫の介護を献身的に続ける理容師だが、テロリストグループの一人、ジュリオ・ロッシと親交があるため、介護疲れの心理に付けこまれ、「協力者」として住本らに利用される。洗脳の過程、弱者に付けこむ洗脳の手法、洗脳が解けず危ない橋を渡り続ける姿、こういったイメージのすべてが鮮明に脳裏に刻み込まれた。

どんどん堕ちていく愛子さん(右)

さすがNHK

スポンサー企業への配慮不要という強みを生かしたドラマ制作ならNHKですね。スタッフも極上で、演出には「ちゅらさん」「ハゲタカ」「篤姫」を手掛けた堀切園健太郎氏、統括には「ハゲタカ」「あまちゃん」「トットてれび」を手掛けた訓覇圭氏、脚本には「相棒」「ゴンゾウ」「リーガルハイ」を手掛けた古沢良太氏が充てられました。これでハズレはないでしょう。ちなみに日韓合作で映画が制作されましたが、石田ゆり子さんが出演されていないので、私は観ませんでした。



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