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#152 VRおじさんの初恋(2024)-余韻が深すぎるヒューマンドラマ
NHKオンデマンド紹介文
おじさんの初恋は、VR世界の中だった―。「現実世界」と「バーチャル世界」を行き来して進む物語。2つの世界がそれぞれ影響しあい、今までとは違う人生を見つけようとする中年サラリーマンの初恋を描く新しい形のヒューマンドラマ。
2024年前半ピカイチ
コミュ症で人生に絶望している孤独なおじさん・直樹(野間口徹)の唯一楽しみは、自分の想念によって作り出されたVR世界を女性風のアバター・ナオキ(倉沢杏菜)を使って散策し、その世界の終わりを見ること。しかし、VR世界で出会った穂波のアバター・ホナミ(井桁弘恵)と心を通わせていくうちに、人生はじめての「初恋」に気づく。ホナミの体調が悪くなり、アバター機能が停止したことを機に、ホナミの個人情報を探り、実際に会いに行ってみると、ホナミは家族と絶縁状態が続き、余命いくばくもない老人・穂波(坂東彌十郎)だった。ここまでが前半のハイライト。視聴者は当然、「この恋は成就するのか?」「いわゆる多様性ドラマか?」「近未来を描いたSFか?」と考えたが、実はそうではなかった。
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複雑に織りなす4つの世界
このドラマではVR世界で人間性を取り戻す直樹が起点となって登場人物たちの関係性が改善されていく。たとえば、直樹と職場の上司(細川善彦)、同僚(堀内敬子)、後輩(瀬戸芭月)、コンビニの店員(青木柚)。最終回の直前では、直樹の狭い部屋でメンバーの起業を祝う宴が開かれる。その他に
穂波の家族、穂波の孫・葵の学校の友人関係がどんどん解れていく。
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後半の核は穂波の家族
幼いころの行き違いが原因で絶縁状態となった穂波とその娘・飛鳥(田中麗奈)。現実世界での仲直りはムリだったが、孫の葵(柊木陽太)と直樹が協力して、ふたりをVRの世界に誘い込み、わだかまりを解消させ、最後は現実の世界でも仲の良い親子に戻していく。ふたりの関係が密になっていく過程を描いた30話と31話は泣けた。最終回(30話)よりも泣けた。なぜなら31話の最後で穂波が亡くなったから。
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最終回で伝えたかったこと
最終回は、直樹と穂波、ナオキとホナミの回想シーンが中心だった。その中で何度も直樹によって語られたセリフが、「穂波が死んでも俺の記憶の中に生き続けている」「俺は絶対穂波を忘れない」だった。初恋を超え、人と人のつながりが永遠であることを示唆する重いセリフだった。それでも、新たに構築されたVRの世界にホナミがいないことを痛感し、嗚咽する直樹。それまで感じることのなかった「寂しさ」「人恋しさ」を直樹が初めて認識した瞬間だった。自分以外誰もいない暗い部屋(≒VR世界)で相手を想定してコミカルに動く姿を含め、この難しい役に名バイプレーヤー・野間口徹さんを充てたNHKの眼力に乾杯。
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一番感銘を受けた言葉
ドラマの終盤、2話続けて実物とそのアバターが会話するシーンがある。ひとりでVR世界に飛び込み、命を終えようとした穂波を止めるホナミ。友情を確かめ合うかのように別れを惜しむ直樹とナオキ。それぞれの場面で語られたセリフ、それは「この世界が終わってもキミのことを忘れない」「本当の自分に出会えてよかった」だった。このセリフにこのドラマの趣旨がすべて含まれていた。余韻の深さにやられた。たぶん、もう3巡すると思う。
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楽曲
主題歌は「ハートビート」(C&K)。挿入歌もC&Kの「旅人」。どちらもドラマの趣旨がしっかり反映された名曲だが、自分は「旅人」推し。29話、30話、31話では両方とも使用されず、最終話でふたつとも使用されたことで感慨ひとしお。
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