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#148 結婚できない男(2006)-おひとりさま男子に生きる勇気を与えた逸品

FOD 紹介文

主人公・桑野信介は腕のいい建築家。その能力は評価され、仕事も多く人並み以上の収入を上げている。しかし性格的には偏屈で独善的、そして皮肉屋。パッと見、女性を引きつけるものを持っているが、実際に付き合ってみると、女性は彼のキャラに辟易し、すぐに彼の元を去ってしまう。そんなことが何度も続くうちに信介は自分には恋愛も結婚も必要ないと思うようになり…。ところが、そんな彼が一人の女性と出会う。この女性・早坂夏美は、それまで信介が会ったことのない、ある種の強さを持った女性だった。信介のキャラと向き合っても、彼をすぐに否定はせず、かといって肯定もせず淡々と向き合う夏美。信介は女性とのそんな関わり方は初めてで、戸惑うのだった。しかし、それがきっかけとなり、膠着(こうちゃく)していた信介の人間関係がにぎやかに。

20年前ゆえの斬新さ

とっくの昔に結婚してしかるべき年代の男女が世間体を気にせず、「おひとりさま」を突き通す。建築家・桑野(阿部寛)と女医・早坂(夏川結衣)の滑稽な人生観が微笑ましく、最後まで噛み合わない関係が苛立たしく、最終回でいくばくかの進展を見せたことで、視聴者に大きな期待と深い余韻を残した名作。2019年の続編では、一瞬、女医の存在が匂わされたが、夏川結衣さんが登場しなかったことに多くの視聴者がガッカリした。

阿部寛だからこそハマった桑野

独身男性の星・桑野信介

上記の画像に示されるように、「おひとりさま」の人生を満喫する桑野。大音量でクラシックを流し指揮を執る姿、恥ずかしげもなく「ひとり焼き肉」を楽しむ姿、家族とのコミュニケーションすら成立しない姿など、世間体をまったく気にせず我が道を突き進む姿が雄々しかった。そのぶん、勝気な女医・早坂との噛み合わない診療シーンがいっそう微笑ましく思えた。

結婚できない男と結婚できない女

陰の功労者

このドラマを盛り上げた貢献者として忘れてならないのが建築事務所の上司澤崎(高島礼子)。桑野の個性に手を焼きながらも、彼を慕う姿は視聴者に十分届いていたのに、なぜか桑野には届かない(笑)。そしてもうひとり、否、もう一匹が桑野の隣人・田村みちる(国仲涼子)の飼い犬・ケン。沈黙したまま、潤んだ瞳で見つめ合う桑野とケン。何の伏線にもなっていない、このシーンが幾度となく繰り返され、笑いをこらえるのに必死だった。

どんどんクローズアップされる潤んだ黒い瞳(笑)

暗さを感じさせないオープニング

ややもすれば「暗い」イメージを残しかねないこのドラマの雰囲気を明るくさせたのが、オープニングで流れる楽曲・スイミー(Every Little Thing)。映像の軽やかさや桑野・早坂への期待感と見事にマッチしていた。毎週の放映を心から楽しみに待てる効果があった。本当に楽しいドラマだった。



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