見出し画像

#153 不信のとき(2006)ーそして彼女はDoctor Xになった

TVer 紹介文

1967年に日経新聞で連載され、1968年には映画化、1984年にはフジテレビでドラマ化された名作を21世紀バージョンで再現!妻と愛人を両てんびんにかけ情事に励む男たちに、妻が、愛人が、大どんでん返しの反撃を食らわす、異色の大人恋愛ドラマです。 愛人を演じたら日本一の米倉涼子が、今回は主婦の味方です!そして愛人には、『大奥 第一章』で総取締・春日局を熱演した松下由樹。 これまでのイメージを覆す、異色のVS。そんな正妻と愛人を客観的に見つめるもう一人の女に杉田かおる。 正妻と愛人、それぞれの女としての幸せ・不満・切なさ・野望。 「隣の芝生は青く見えるもの」- その対比を描き出していきます。 そんな女たちの心の奥底を露知らずの男たち。 「お宅のご主人は、このドラマをあなたと一緒に堂々と観れますか?」 このドラマは『夫婦の踏み絵』『夫婦間のバロメーター』です。

不倫ドラマというよりも戦闘もの

このドラマの魅力は、「逆境を超えて逞しくなる正妻」と「逆境を超えて冷酷無比となる愛人」、ふたりを煽り続けるトラブルメーカーの家政婦、そして、女好きの本能に抗えず、正妻と愛人を苦しめる無邪気な夫、この4人が紡ぎだすドエライ緊張感。正妻・道子(米倉涼子)、愛人・マチ子(松下由樹)、家政婦(杉田かおる)、道子の夫・浅井(石黒賢)のコンビネーションが盤石。いわゆる不倫ドラマとは一線を画した戦闘もの。

銀座のママ(松下由樹)と効力感の低い妻(米倉涼子)

Doctor Xを感じさせないボロボロの米倉涼子

設定が哀れ。良家に嫁いだものの、不妊治療に励むも、こどもに恵まれないことを姑(江波杏子)から責め続けられ、夫(石黒賢)には不倫され、愛人(松下由樹)の妊娠・出産を目の当たりにし、書道家(小泉孝太郎)に惹かれ、心を病み、涙するシーンが前半部の大半。さめざめと泣く姿にDoctor Xのかけらは微塵もなし。

諸悪の根源はコイツ(右・石黒賢)

Doctor Xを感じさせる強気の米倉涼子

全12話のうち、ふたりが直接向き合うのは終盤の4話程度。それまでは、道子、マチ子ともに、自由奔放な浅井に振り回される描写が続くが、後半は一転、道子も妊娠・出産を経験し、母として強くなり、マチ子との対決姿勢が鮮明に描かれる。悪態をつきながら浅井に三下り半をつけようとしたマチ子の真意(浅井への愛)を見抜き、本音で舌戦を繰り広げたり、浅井の胃ガンが発覚し、彼の死を看取る寸前、マチ子に面会の機会を提供するなど、人として強くなっていく姿が頼もしく思えた。

最後の3話はずっとこんな感じ

秘密は墓場まで持っていく

このドラマの凄みは女同士の壮絶な戦いだけではなく、いろんなウソが絡み合うところ。道子の妊娠は人工授精のおかげであり、浅井は「無精子症」であると、道子がマチ子と浅井に告げる。それが本当なら、マチ子の子どもの父親は浅井ではなく、銀座のクラブに通う別の男ということになる。マチ子が否定しないため、視聴者は無精子症を信じてしまう。しかし、浅井の無精子症が本当なら、道子が敢えて人工授精に挑む必要はなく、出産した子どもの父親は小泉孝太郎ではないかという疑いが生じる。そんな謎が明かされず怪しさを残したまま、道子とマチ子は新たな歩みを踏み出す。一見、格好良いラストシーンだが、強烈なモヤモヤ感が残った。

こういう怪しい伏線が視聴者を悩ませる

そして彼女は大門未知子に

それまでどちらかというと、失敗を繰り返す不幸な女性役の多かった米倉涼子にとって、このドラマは「失敗しない女」に変貌する契機になったのではないだろうか。Doctor Xシーズン1(2012)とは6年のインターバルがあるが、このドラマの中で彼女が大門未知子に成長していくプロセスを見たような気がする。

私、失敗しないので


この記事が参加している募集

#ドラマ感想文

1,612件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?