『モダンホライゾン2』EDH視点カード評価
1・カードリスト・リリースノート
https://mtg-jp.com/rules/img/mh2_faq/JP_MTGMH2_ReleaseNotes_20210606.pdf
2・カード評価
☆白
・鍛冶屋の技
対象のパーマネントに呪禁と破壊不能を与える1マナインスタント。単体になった代わりに軽くなった《英雄的介入》とも言えそう。
EDHではパーマネントを戦闘ダメージから守る事は少なく、除去を避ける用途で使う事の方が多いので、同じく1マナでパーマネントにプロテクションを与える《信仰の盾》よりも使いやすそうです。
非青系、特に非クリーチャーのコンボパーツに頼るデッキの疑似的なカウンターとして使われる事があるかも知れません。
・エスパーの歩哨
《Mystic Remora》を思わせるようなドロー能力を持つクリーチャー。
「ほぞ」であり、1/1であり、1マナクリーチャーであるため、《イーオスのレインジャー長》や《護衛募集員》、《粗石の魔道士》や《帝国の徴募兵》といったカードで幅広くサーチ出来るので設置しやすそうです。
安定して設置する事は難しくないのですが、その使い勝手はどうかというと、自分は微妙だと思っています。単体では縛る事が出来るマナがわずか1マナのみで、さらには最初の呪文にしか反応しないのでストーム系の抑止力にもなりません。
多少重くなったとしても、非クリーチャー呪文に毎回反応してくれれば大分違ったのですが。
・孤独
ピッチ生物サイクルの白。《剣を鍬に》が0マナで撃てます。
元々1マナと軽い《剣を鍬に》ですが、それでも1と0の差は非常に大きく、一切マナを立てずに構えつつ展開できる事のメリットは非常に大きいです。
しかしながら使いにくい面も幾つかあります。ひとつは、素のコストが5マナと重く、中盤辺り程度の時間帯では生撃ちが望めない事。そしてもうひとつは、現状のEDHでは白が濃いデッキが非常に少ない事にあります。公式から強化を宣言されたとは言え未だに弱色である白をメインに強いデッキを組む事は難しく、このカード自体の強化のためにも今後の新たなカードに期待が持たれます。
☆青
・任務+完了
《思い起こし》の亜種です。《思い起こし》と全く同様の効果が分割カードの片側となっており、基本的にはより優秀なカードとして扱えます。
《思い起こし》効果を持つ《任務》と逆の片側である《完了》のメリットは、なんと言ってもインスタントである事にあります。これにより、墓地回収系を《商人の巻物》からサーチする事が可能となりました。
《オジュタイの達人、テイガム》などにとっては収穫と言えそうです。
・通り抜け
《ヴィダルケンの霊気魔道士》に続くウィザード・サイクリング持ちのカードです。
《霊気魔道士》の起動が3マナだったのに対し、こちらは2マナと軽くなっており、概ね上位互換として使う事が出来るでしょう。元のカードがソーサリーである点も、青いデッキにとっては《霊気魔道士》よりも扱いやすくて嬉しい点です。
《タッサの神託者》《呪文探求者》《未来の大魔術師》《粗石の魔道士》といった、数多く存在するコンボパーツになり得るウィザードを手に入れるため、特定のデッキでは喜んで使われる事となるでしょう。
・緻密
ピッチ生物サイクルの青版。クリーチャー呪文をオーナーのライブラリーの上か下に置く事が出来ます。
これまでの0~1マナで撃てる打消しは、そのほとんどがクリーチャーを打ち消す事が出来ませんでした。そんな環境にあって、ピッチでクリーチャーを打ち消せるカードの追加は影響力が大きいです。
しかしその打消し効果自体は弱めで、ほぼ1ターンの時間稼ぎにしかなりません。今後の環境で《否定の力》のように環境で頻繁に見かけるカードになれるかどうかという点には、正直疑問が残ります。せめて《霊魂放逐》か《記憶の欠落》の効果だったら……。
素のコストが4マナと絶妙な重さなので、少し遅めのデッキならば生撃ちも見込めてより強く使えるかも知れません。効果が守備的な事(自分のコンボを押し通す攻撃的な用途の場合、打ち消したいのは主にインスタントであるため)も含めて相性は悪くなさそうです。
・待機
1マナインスタントの追放除去。ただし《遅延》よろしく2ターン後に帰ってきます。
《遅延》に比べて乗せる時間カウンターが1つ少なく、感覚的に結構早く帰ってきてしまう印象です。使うのなら、早めのデッキの除去枠として採用するのが良さそうです。
しかしながら、そもそも青の1マナクリーチャー除去は《猿術》《急速混成》とすでに2枚あり、より広く見るならば《蒸気の連鎖》というバウンスもあります。「どうしても追放したい」「コンセプト的に対戦相手に3/3トークンを与える影響力が大きい」といった特別な理由が無い限り、採用される事はなさそうだと自分は考えています。
・海と空のシヴィエルン
青単の伝説のマーフォーク・神。3マナ3/4という妙に恵まれたスタッツと、攻撃時にドロー出来る能力を持ちます。また、周辺にマーフォークがいると破壊不能を得たり護法1を与えたりしますが、EDHでは大きな意味を持つ事は少ないでしょう。
破壊不能を持たずとも、3/4というサイズはEDHにおいては戦闘で討ち取られにくい大きさで、安定したドローが見込めそうではあります。
《織り手のティムナ》のような、攻撃を起点とする誘発を持つ他のデッキに投入する候補になり得るようなスペックですが、その際には青のダブルシンボルが少しネックになりそうです。
ジェネラルとしても悪くはなさそうですが、同じく3マナでアドバンテージを期待出来る《湖に潜む者、エムリー》なんかを見てしまうと少し厳しそうに思えてしまいます。
☆黒
・陰謀団の新入り
黒の2マナ共鳴者の追加要員。それ以上でも以下でもないですが、頭数が増えるのは良い事です。
・ダウスィーの虚空歩き
《虚空の力線》的な能力と、その効果で追放されたカードをマナ・コストを支払う必要なくプレイする能力を持つ2マナのクリーチャー。
墓地対策を兼ねながら、対戦相手の強力なカードを奪う事で攻撃的に使う事も出来るので強そうです。プレイにはマナを必要としないので、《穢れた血、ラザケシュ》や《召し上げ》なんかの重くて強力なカードを追放した日には宇宙が見えます。2マナとは思えないスペックです。
また、プレイ能力は追放能力と紐づけられているのではなく、追放したカードに置く虚空カウンターに依存しているため、一度プレイ能力を起動した後の再利用時にも、先に追放されていたカードを使えるのは使い勝手が良いです。《夢の巣のルールス》で貪欲に使い回してぇ。
また、それゆえに自分の《虚空歩き》で追放していたカードを対戦相手の《虚空歩き》に使われる可能性もあるため、そこには注意が必要そうです。
唯一シンボルの濃さは気になりますが、近年で言う《船殻破り》や《敵対工作員》的な立ち位置で意識されるようなクリーチャーとなるのではないかと予想しています。
・頑強
2マナソーサリーのリアニメイト呪文。ただし伝説のクリーチャーは対象に出来ず、リアニメイトしたクリーチャーは-1/-1カウンターが1個置かれた状態で出てきます。
《呪文探究者》でサーチ出来る範囲のリアニメイト呪文でありながら、《死体発掘》のような他人の墓地に依存する危険性もなければ、《浅すぎる墓穴》のような対象が不安定になるようなデメリットもありません。《再活性》のようにライフを支払う必要もないので繰り返し使う目的にも適しています。
そのため、《儀式の大魔導師、イナーラ》の《呪文探究者》コンボの終着点として最適となる強化カードと言えます。(これまでは主に《浅すぎる墓穴》が使われていたのですが、戦場にクリーチャーがいると除去を合わせられて《星霜の学者》につなぐ事が出来なくなってしまう場面がありました)
なお通常のリアニメイトカードとしては、最近はもっぱら《穢れた血、ラザケシュ》が最有力の釣り先となっている事もあり、2マナリアニメイト枠は《動く死体》や《Dance of the Dead》の方が優先される事となりそうです。
・不敬な教示者
待機版《悪魔の教示者》。
2ターンという時間はEDHだと長いとも短いとも言えない絶妙なタイムラグなので、特にギミックなしでもサーチの枚数を増やしたいデッキでは追加のチューターとして使われるかもしれない、と思っています。ただ、どうしてもトップデッキした時の即効性の無さは気になるため、《願い爪のタリスマン》や《不気味な教示者》辺りに加えてさらに、というデッキ向けという印象です。
しかしながら、早めのタイミングで待機しておいた場合には、その盤面に最適なカードを手札に加えた状態、かつマナもフルオープンに使える状態でターンを始める事が出来ます。上振れが大きいカードと言えるでしょう。
0マナであるため、《騒々しい写本、コーディ》ジェネラルで使うデッキが考案されているようです。起動型能力で発生したマナから1マナの呪文を唱える事で確実にアクセスでき、そこから《むかつき》につなげてしまおう、というコンセプトのものです。
・無名の墓
色々と弱体化したモダン向け《納墓》。2マナと重くなり、ソーサリーとなって奇襲性が下がり、「伝説でない」と制限が加わってしまいました。
1マナから2マナへの変化は大きな弱体化ではあるものの、現在存在する他のサーチカードに比べれば圧倒的に軽いため、特定カードを墓地に落とすデッキでは2枚目の《納墓》として十分な働きを見せてくれる事でしょう。
《儀式の大魔導師、イナーラ》や《死に微笑むもの、アリーシャ》、《ギトラグの怪物》といった、特定のコンボパーツを墓地に落としたいデッキでは福音となりそうです。
ただ、単純にリアニメイトを追加プランとしているデッキの多くは伝説のクリーチャーである《穢れた血、ラザケシュ》軸だったりするので、新環境では単純に現在の《納墓》と同じくらいの枚数が採用されるになる、とはいかなそうです。
・不快な納墓役
ETBで《納墓》出来るクリーチャー。《墓破りのラミア》のメリット能力をもろもろ取っ払った結果、ようやく1マナだけ軽くしてもらえました。
エンチャントである事も、サイズが大きい事も、墓地からのキャストが軽くなる事もEDHだとそこまで評価出来る点ではなく、単純に1マナ軽くなってくれた事の方が圧倒的に偉いです。
《墓破りのラミア》を使っていたようなデッキの多くは、追加でコイツを投入するか、あるいは《ラミア》と入れ替えられる事となるでしょう。
☆赤
・猛火のルートワラ
0マナのマッドネスカード。他にも何枚かありますが、マッドネスコストが最も軽かったので。
今回セットの赤黒にはマッドネスが割り当てられており、マッドネスを軸とする赤黒ジェネラルである《エインジー・ファルケンラス》は大幅強化となりました。
特にクリーチャーであれば《忌むべき者の歌》や《霊廟の秘密》の強化につながりますし、さらにマッドネスコストが軽ければ《穢れた血、ラザケシュ》の餌の確保に貢献出来るので非常に影響力が大きいです。
《エインジー》にとっては嬉しい1枚と言えるでしょう。
・ゴブリンの罠走り
殴るたびにコインフリップを3回するゴブリン。《混沌の目、オカウン》&《知恵の目、ゼンドスプルト》のお供ですね。
4マナは少し重いですし、攻撃する必要があるタフネス2は場持ちが頼りないですが、それでも1枚で毎ターン3回もコインフリップ出来るのは魅力的です。
コインの勝利で得られる効果はEDH的には比較的どうでもいいです。
・敏捷なこそ泥、ラガバン
戦闘ダメージで《鋭い目の航海士、マルコム》と《鉄面連合の略取者、ブリーチェス》の誘発を合わせたような効果が誘発する伝説のクリーチャー。疾駆も出来ます。
1マナとは思えない贅沢なスペックで、早いターンに引ければかなりのアドバンテージを期待出来そうです。対戦相手が3人いるEDHだと比較的容易なのも嬉しい点です。
しかしながら、最近の環境は汎用性の高い有力なクリーチャーも増えてきており、統率者ピッチの影響でジェネラルを積極的に戦場に送り込むデッキも増えているためにブロッカーが立ちやすいです。2/1というサイズも頼りなく、中盤以降に引いた場合には無駄牌になりがちというリスクは忘れずにいたいです。
遅いターンに引いても困らないように、軽いクリーチャーという点をメリットに出来るデッキ(《頭蓋骨絞め》や《ガイアの揺籃の地》などを積極的に用いる、など)ならばリスクを低減出来るのでなお良いでしょう。
他のフォーマットでも注目度が高く人気ですが、ぜひとも1枚押さえておきたいカードです。
・酒場の悪漢
コイン投げに勝つたびに宝物・トークンを2つ生成するクリーチャー。自前でコインを投げる自己完結能力も持っています。
《熱狂のイフリート》とのコンボが色々な意味で話題になっていますね。大量コインフリップから莫大な宝物を手に入れる事が期待出来るのですが、省略出来るループを形成できない(ルール上、不確定要素がある場合には手順の省略はできない)のでどうするの? という問題です。
以前から《ギトラグの怪物》コンボや無限切削など、同様の問題が発生する事はあったのですが、新たな問題児の登場に話題が再燃しました。
カジュアルなゲームでは卓内で省略を了承してくれるでしょうが、フロアルールに則った大会形式の場合には、前述の問題に対して「手順の省略」や「遅いプレイ」といったルールがかかって来るので、ジャッジに良く確認してから使用するのが良いかも知れません。
☆緑
・リスの将軍、サワギバ
黒緑の固有色を持つ伝説のリス。トークンが生成される際、1/1のリストークンがおまけで付いてくる能力を持っています。
クリーチャーの死亡誘発で宝物・トークンを生成する《無慈悲な略奪者》とのコンボが話題になっていますね。生成されるのが宝物・トークンなおかげで《サワギバ》の起動型能力の起動コストを賄う事が出来るのが噛み合っています。初動で生け贄に捧げるリスが2体以上ならそのまま無限マナまで。
リスの部族ファンデッキ統率者ではありますが、ファンデッキと言うには中々に優秀そうなジェネラルです。
・忍耐
ピッチ生物サイクルの緑版。戦場に出た時、対象のプレイヤーの墓地のカードをライブラリーへと戻す事が出来ます。
墓地を追放するのではなくライブラリーに戻すため、墓地利用への対策になるとともにライブラリーアウトの対策となります。
中々ピンポイント気味な対策カードなのですが、現在のEDHで流行の勝ち手段である《死の国からの脱出》と《タッサの神託者》に対して有効なのは強みと言えるでしょう。
個人的には、「自分の勝ち筋を押し通すための打消し」「自分の勝ち筋を潰す致命的な妨害置物に対する除去」以外の妨害にしかならない妨害カードはあまり好きではないのですが、特に青くないデッキでは《脱出》《神託者》へ対抗するのは中々難しい所もありますし、0マナで撃てるのは破格なので見かける事は結構ありそうです。
・基盤砕き
ETBで《帰化》が出来る想起持ち。
比較対象は《再利用の賢者》で、「想起の場合1マナ軽い」「墓地利用や死亡誘発と好相性」などのメリットはあるのですが、一方で「エルフシナジーがない」「想起した場合に戦場にクリーチャーを残せない」といったデメリットを持っています。
一長一短ですが、いい具合に同程度のカードパワーのある選択肢が増えたのは良い事ですね。
・下賤の教主
《貴族の教主》のジャンド版。
《貴族の教主》同様に、固有色の合ったデッキにおける優秀なマナクリーチャーとして活躍してくれるでしょう。すでに評価が固まり切っている既存カードとスペックが似すぎてて特に話す事がないな……。
・裂け目を蒔く者
待機2持ちのマナクリ。待機の数やマナ・コストなど、《明日への探索》を意識した作りになっています。
《明日への探索》も一部のデッキでは実績のあるカードなので、土地シナジーが特にないデッキであればそのまま追加で採用されるようになるでしょう。除去を受けやすいクリーチャーである反面、好きな色のマナが出るので色は安定させやすいです。
また、《明日への探索》と違い、デッキに基本土地を入れる必要が無いので、基本土地がほとんど入らないような多色デッキで新たに考慮されるようになるかも知れません。
自分はEDHで《明日への探索》を十分な回数使った事がないため明確な感触は分からないのですが、《トレストの密偵長、エドリック》や《織り手のティムナ》のような、戦闘誘発持ちのジェネラルで試してみる価値はありそうです。
・聖域の織り手
緑色の生きている《セラの聖域》。本人がクリーチャー・エンチャントなので単体でも1マナ出ます。
1マナ保証があるおかげで、デッキを少しエンチャントに寄せるだけでも複数マナが出る事を期待出来るでしょう。
特筆すべきは《ペミンのオーラ》《現実からの遊離》との無限マナコンボでしょう。これまでの《ペミンのオーラ》系を使用した無限マナコンボと違い、パーツがエンチャントのみでまとまっているのでサーチしやすいのが特長です。
エンチャントサーチを得意とする白を含んだ白青緑以上の固有色を持つデッキでは、無限マナエンジンとして考慮に値する事になりそうです。
・小走り樫
+1/+1カウンターが置かれるたびにリス・トークンを生成するツリーフォーク。進化持ちで、ある程度は勝手にトークンが出そうなデザインになっています。
トークン生成で+1/+1カウンターを置く能力が誘発する《キヅタ小径の住人》とのコンボが話題になっています。これだけだと無限トークンにしかならず、既存の《大地の知識》+《リスの巣》並みの微妙なコンボではあるものの、緑のみの固有色で可能であり、緑でサーチしやすいクリーチャーでまとまっている事から扱いやすいコンボであると言えるでしょう。
今回加わったカードでは、同様に《キヅタ小径の住人》とコンボする《獣群のベイロス》があるのですが、パーツがより軽く、(《小走り樫》が未進化なら)どちらのパーツを先に出しても揃った時点からコンボスタートできるこちらの方がより優秀と言えるでしょう。
☆多色
・ゴブリンの壊乱術士
赤と緑の呪文のマナコストを1減らしてくれるゴブリン。今回のセットでは赤緑がストーム担当という事もあり、《ゴブリンの電術師》(軽減するのはインスタント・ソーサリー)のオマージュとして作られたかと思われます。
《略奪の母、汁婆》とは固有色も能力もぴったりで、採用に値するカードとなるでしょう。
・不吉な儀式の僧侶
《宿命のネクロマンサー》のようなリアニメイト効果を持つ軽量クリーチャー。固有色は白黒。《宿命のネクロマンサー》に比べると、マナ・コストも起動コストも必要なマナ総量が少なくなっており、総じて強化されていると言えるでしょう。
しかしながら最大の懸念点である召喚酔いというタイムラグは残っているため、相変わらず使いやすいとは言い難いのが残念です。
ですが、このクリーチャーにはその欠点を補うかのように蘇生能力が付いています。墓地に落とした後は、さながらクリーチャー版《堀葬の儀式》のように扱えるでしょう。《堀葬の儀式》に比べて1マナ重いものの、シナジーの多いクリーチャーである点は評価出来ます。
クリーチャーである事を活かし、《生き埋め》1枚から任意のクリーチャーをリアニメイトしたりも出来ますが……5白黒黒か……重いな……。
・収穫の手、サイシス
白緑の固有色を持つエンチャントレスのレジェンド。本人もエンチャントであるため、別のエンチャントレス系カードを先置きしていてもドロー誘発を狙えるのが嬉しいです。
既に存在しているエンチャントレス効果を持つレジェンド《日照のトゥヴァーサ》と比べると固有色から青が消えてしまった事は痛手ですが、ドロー誘発の回数に制限がないためストーム然としたチェインコンボを狙えるようになりました。
本人が2マナと非常に軽い事、カウンターを擁する青を失ってしまった事などの要因から、前のめり気味な構築とするのが良さそうです。
・運命の炎、ユースリ
攻撃するたびに最大5枚のコインを投げ、勝った数だけカードを引き、負けた数×2点だけのダメージをもらう能力を持つレジェンド。5勝した際には、そのターン手札からの呪文はマナ・コストを支払わずに唱え放題になるおまけ付き。ちなみに、コインを5枚投げて5勝出来る確率は3.125%です。
単純に、攻撃するたび期待値2.5枚カードを引ける(期待値5点のダメージをもらいますが)というのは3マナのクリーチャーとして破格のスペックです。2/3飛行と比較的生きて帰ってきやすいボディーを持っているのも嬉しい所。
是非とも《親指なしのクラーク》や《クラークの親指》を利用して5勝を狙いたいです。リターンが非常に大きく、構築によってはそこからそのままチェインして勝つ事すら難しくないでしょう。とはいえ《クラーク》の力を借りてすら5勝出来る確率は25%以下で、あまり過度の期待を持つ事は出来なそうですが。
「3マナ2/3飛行で、攻撃のたびに2枚以上のドローが期待出来るクリーチャー」というのは他のデッキに添えるにしても非常に強力な性能です。まるで生きている《森の知恵》かのように活躍してくれるでしょう。
・石なる知識
《渦まく知識》のアーティファクト版。
使用するためには、キャストに1マナ・起動に2マナの都合3マナ必要で、決して効率が良いとは言えません。しかしながら、一部の「特定のコンボパーツがライブラリーに入っていてくれないととても困る」デッキでは採用されうるカードとなるでしょう。
非常に似たの効果のカードとして《Conch Horn》というカードもありますが、そちらと比べると《石なる知識》の方が手札から整理できるカードの枚数が多く、またほぞであるため必要なタイミングでのサーチが容易な点で、より便利に使えるカードとなりそうです。
・ダイアモンドのライオン
《ライオンの瞳のダイアモンド》によく似た起動型能力を持ったアーティファクト・クリーチャー。
2マナというマナ・コストを持つ点、そして何より能力起動にタップが加わっており、さらにはクリーチャーであるために召喚酔いに影響される点によって大きく弱体化しています。
幾つかもデッキで優秀なコンボパーツとして活躍している《ライオンの瞳のダイアモンド》と違い、こちらは《山賊の頭、伍堂》のような一部のオールインデッキに採用されるに留まる事になりそうです。
・液鋼の首飾り
《液鋼の塗膜》のような能力を持ったマナアーティファクト。《液鋼の塗膜》と違って土地を対象に取る事は出来ません。
最低限のマナファクトとしての機能を備えながら、アーティファクトシナジーを加速する能力を持ちます。能力が独特なので無条件に優先される訳ではないでしょうが、相性の良いデッキならば《精神石》《虹色のレンズ》辺りの2マナ無色ファクトの代表格に迫る活躍も出来そうです。
・極楽の羽ばたき飛行機械
《極楽鳥》と《羽ばたき飛行機械》を合体させたようなアーティファクト・クリーチャー。
好きなマナを生み出す事が出来、タフネスも高く、飛行を持っています。これまでの2マナのアーティファクトマナクリーチャー、マナマイアや《マナキン人形》に比べると破格のスペックです。
マナマイアや《マナキン人形》は採用実績のあるカードです。それらと同様の、クリーチャーシナジーを持つ緑でないデッキでは有力な候補となるでしょう。
クリーチャーシナジーを抜きにしても、2マナタップインで好きな色が出せるマナファクト相当の性能です。単色デッキでは《秘儀の印鑑》《友なる石》に続く2マナの有色マナファクトとして採用されるかも知れません。特にアーティファクトシナジーが強い青や赤では期待が大きいです。
☆土地
・剃刀潮の橋
2色版アーティファクト・土地。破壊不能付き。10種類、すべての色の組み合わせで登場しました。
タップインなのはいただけませんが、破壊不能とアーティファクトシナジーから、これまでの2色タップインランドと比べるとかなり使い出がありそうな性質となっています。デッキによっては稀に使われる事がありそうです。
・ウルザの物語
土地であり英雄譚である、という新たなタイプの組み合わせを持つカード。
EDHだと、戦場に出た時から最低限の無色土地として機能するようになる1章と、戦場を離れる代わりに3章能力が強いです。
特に3章能力は、《魔力の墓所》《太陽の指輪》《魔力の櫃》《師範の占い独楽》といった、ヴィンテージ級の軽量アーティファクトを使える代わりにハイランダー構築のEDHでは、他フォーマットよりも強力に働きます。
また、これは小技なのですが、英雄譚が自身の能力を生け贄に捧げられるのは、「最終章で誘発した能力が解決された後」かつ「章が進むのは第一メイン開始時」なので、生け贄に捧げられる直前の《ウルザの物語》をタップしてマナを出し、さらに3章能力で《魔力の櫃》や《太陽の指輪》をサーチする事で大きくマナを伸ばす事が出来ます。
アーティファクトシナジーの強いデッキ、「ほぞ」を主要なコンボパーツにしているデッキはもとより、《魔力の墓所》《太陽の指輪》は無理なく非常に多くのEDHデッキに入ってくるカードであるため、色拘束がよほど強くないデッキであれば適当に投入しても良い仕事をしそうです。
・成長の揺り篭、ヤヴィマヤ
緑版《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》。《アーボーグ》同様、固有色を持たないので緑以外のデッキにも入れられます。
黒は沼を参照する強めのカードが多く、濃いシンボルを安定させる以外にもそれらのカードとのシナジーを意図して使われる事が多かったカードなのですが、緑の森を参照する強いカードは黒ほどは多くありません。なので、黒デッキの《アーボーグ》ほどには《ヤヴィマヤ》は緑デッキに採用される事は少ないだろうと考えています。
一方で、緑以外のカードで対戦相手がコントロールする森を参照する有力カードとして《水没》があります。同様のサイクルの黒版にはない利点です。
そのため、《ヤヴィマヤ》から出る緑マナが無駄になりにくい青緑デッキや、無色マナ土地枠に余裕が出がちな青単デッキなどでは、自分が森を参照するカードや緑シンボルの濃いカードを使っていない場合でも、《ヤヴィマヤ》が採用されるパターンが出てくるかもしれません。
3・総評
前回のモダンホライゾンに負けず劣らず、強力な新カードのオンパレードといった風情のセットでした。
《タッサの神託者》や《むかつき》並みに環境を定義するほどのカードこそなさそうに見えますが、ニッチなデッキに嵌る優良カードから今後の汎用カードになりそうな強力なカードまで、幅広くパワーカードが揃っている印象を受けました。
中でも黒は特に有用なカードが多い印象を受けました。レア以上には広く採用されそうなカードが非常に多く、アンコモン以下も「特定のデッキならば嬉しいのでは?」というカードが複数見られます。
ジェネラル候補の収穫は今一つでしたが、その中にあって《収穫の手、サイシス》は良さそうです。ながらく白緑の戦略のひとつとしてあったエンチャントレス型にぴったりと合致するレジェンドであり、《ウェザーライトの艦長、ジョイラ》や《帰還した探検者、セルヴァラ》のようなチェインデッキの成立を予感させられました。
また、《運命の炎、ユースリ》は効果が派手で楽しそうで、試してみたくなる魅力を感じています。
今回のセットでは、多くのジェネラルが大きな収穫を得る事になると思っています。新環境のゲームは、新鮮でよりパワフルなものになりそうだと予感しています。
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