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初めての一人東京 前編

私は九州で生まれ育ち、人が多いところは苦手だ。
初めて東京を訪れたのは高校生の時の修学旅行。一緒に回る友達も居らず、一人でディズニーランドを巡った寂しい思い出がある。あそこは東京では無く千葉だが、東京も移動しているので東京の思い出にカウントして差し支えないだろう。
2回目は訪れたというより通過だ。大学のサークルでとあるイベントに参加するため、東京の空港を経由しただけだ。東京の思い出といえばそんなものだったから、また東京を訪れることになろうとは思いもしなかった。

それは私が30歳を過ぎた頃。私はとあるスマホゲームをしていた。そのゲームにはチャット機能があり、同じサーバーや入っているグループ内でチャットが出来た。そして、そこで仲良くなったメンバーでオフ会をしようということになった。場所は東京。メンバーは日本各地に住んでいたから、それが1番無難だった。ここからの調整は主にLINEで行われ、私は成り行きを見守った。

そして当日。私は仕事が終わると、そのままの格好や荷物で空港へ向かう。普段、お昼ご飯は弁当を詰めて持っていっていたが、この日に限っては荷物を減らしたく、惣菜パンで済ませていた。冬といえど、飛行機の便に間に合うように急ぎ、汗をかいていたのでハンカチで度々顔を拭う。すると、思いの外早く空港に着き、少々待つことになった。
空腹で小走りしていたため、疲労が体を襲う。無事に飛行機に搭乗したが、ぐったりとしてきた。飛行機内では、機内モードにしたスマホで音楽を聴き、体力の回復に努めた。
そして、飛行機は成田空港に到着する。羽田ではなく、成田だ。そう、私は安いからという理由で、成田空港へのチケットを購入していたのだ。成田空港は都心部から遠い。しかも不運なことに、飛行機はやや遅延しており、乗る予定のバスの時刻が逼迫していた。私はなんとしても間に合わせるため、土地勘が無いながらも走ってバス停を探す。バス停は無事に見つかり、予定していたバスにも乗ることが出来た。しかし、その代償に体力は底をついてしまったのだった。