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紙の地図と計算

今は便利になったもので、GoogleMAPなんかのサービスを使うことで、簡単に出発地点と目的地点の経路距離を求めることができるが、一昔前はそんなことは無かった。だから当時は、原付で出掛ける目的地を決めたら、そこまでの直線距離を地図で測り、それに大体1.57を掛けておおよその経路距離とし、信号待ちを考えて平均の移動速度は法定最高速度の0.7倍~0.8倍とざっくり計算して、移動に掛かる時間を見積もっていた。
この、移動速度の0.7~0.8倍は体感で出していて、市街地を通るなら信号待ち多め、そうでないなら信号待ち少なめといった感じで設定しているが、経路距離の計算の1.57倍は違う。今では役立つことも少ないが、その計算の理由を説明していく。

河川の源流から河口まで実際に流れる経路距離と、直線距離の比の平均がどのくらいになっているか知っているだろうか?実は、大体1.57で、円周率πを2で割った、π/2の値で近似される。なぜそうなるかというと、河川が複数の山の間を流れることを考えると、その経路は等高線に沿うようになり、弧を描くことがわかる。つまり、河川の形状は複数の円弧を繋いだものと見なせる訳だ。
それをもっと単純化して、複数の円を、全ての円の中心が同一直線上に並ぶように数珠繋ぎにすることを考える。直線を中心に線対称となるので、円ではなく半円で考えることとする。すると、この半円の長さの和と、直径の長さの和の比は常にπ/2になることが分かる。半円とその直径とを一組ずつ比較していくことで簡単に証明が可能だ。

道も沿岸沿いであれば、埋め立て地のような例外を除けば等高線に沿うようになるため、複数の円弧の組み合わせと考えることが出来る。また、山道も極力傾斜が少ないように舗装されているから、河川と同様に考えることが可能だ。だから、遠方に行く際は大体この計算で上手くいくのだ。実際、当時は道迷いを除けば、大抵は想定した時間の前後でツーリングを終えていた。逆に、市街地のように真っ直ぐな道が多かったり、高速道路のように線形が改良されている場所が多かったりすると上手くいかないし、山道でもつづら折りになっているところを通るのであれば上手くいかないことが多い。
便利になった現在ではあまり役立つ機会は無いだろうが、紙の地図は持っているがネット環境に無いような場合には使えるかもしれない。綿密に計画を立てるより、思い付きで行動する私のような人には、こういうアナログな手法の方が向いているように思える。