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現実に染まる夢

※これは、変化した夢と現実 の続きです。

大学で、教えるよりも研究する方が私には合っていると感じ、私は大学院へ進学した。教育について専門的に検定するという訳ではない。数学の研究だ。
しかし、大学は教育系で、私の居た学科では教育にまつわることも学ぶため、その分教科の専門的な内容までは学べない。具体的に言えば、私の居た学科4年間で学んだ内容は、理学部で言えば2年生前期ぐらいのレベルに相当する。学部のうちから専門的に学んだ人達と、約2年半の差。これは大きい差だった。
講義で学ぶこと全てが目新しく、大学の図書館や研究所に籠る。こちらでは学部生で知っていることすら、私は知らなかった。私だって、学部生の頃はよく大学の図書館に入り浸っていたが、蔵書の質や数が雲泥の差だ。それはそのはず、私が学部生の頃に居た大学には、理学部など無かった。数学のテキストは、ほとんどが工学部向けのもの。僅かばかりあった工学部以外向けの本を私は読んでいたのだ。

そして私は研究に行き詰まる。約2年半の遅れを取り戻しつつ、更に発表できるレベルの研究をすることなど、私には出来なかった。高校選び、大学選び、そして転学。その選択肢を私は選ぶことはできた。全て私の責任だ。大学院にこのまま残っても学費もタダではない。私は潔く大学院を中退することにした。

そうして、数学を研究したいという夢は潰えた。しかし、今でもたまに趣味で数学をやっている。思い付いた疑問を解けるのか試行錯誤するのだ。私と数学との関わりは、これぐらいがちょうどいい。世の中には、日曜数学者なんていう、日曜大工の数学者版をしている人だっている。成果がうまくまとまれば、私もそのように発表することだってあるのかもしれない。現実を知り、随分と規模は変わってしまったが、それでも尚私はこの夢を抱き続ける。