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初恋(1)

初恋とは、どのことを指すのだろう?初恋を私の手元にある古い辞書で引くと「その人にとって初めての恋」と書かれており、更に「恋」を辞書で引くと「ある異性に憧れ、慕う気持ち」と出てきた。今では多様な恋愛感情が知られているので、今ではきっと辞書の表現は違ったものになっているのだろう。兎にも角にも、私にとってそれを「恋」だと思った最初のときを綴ってみる。

それは幼稚園生の年中の頃。とある同い年の女の子とよく遊んでいた。その子とはお互いに、「将来は〇〇くん/ちゃんと結婚する!」と言っていた。微笑ましい関係だ。しかしそれもそう長くは続かない。
小学生になり、その子とは住む地区の学区が異なったため、それぞれ違う小学校に入った。こればかりはどうしようもない。小学1年生の頃はまだその子のことを好きだったが、小学2年生のときに転機が訪れた。小学2年生の頃の担任の先生が、初恋の子の母親だったのだ。

私は忘れ物が多く、その先生には何度も叱られ、その度に泣いた。泣く度に初恋の子への気持ちが薄れていく。あの子と結婚すると、こんなに厳しい義理の母と接する必要がある。何とも子どもらしくない、いや、寧ろ感情に正直で子どもらしい考えかもしれない。結果、私の初恋は潰えた。

結局、幼稚園生の頃以来、その子とは会えていない。向こうもきっと私の事など忘れてしまっているだろう。子どもの頃の記憶とはそんなものだ。毎日出会うものの方が印象が強く、どんなに好きだったものでも出会う機会が無くなると忘却してしまう。私がこうして書き綴るものたちも、忘却してなお心に残っているものでしかないのだ。