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ストーカーだと勘違いされた話

これは2年程前、会社帰りのことだった。
私は帰宅の為、市街地にある最寄りのバス停まで歩きつつ、スマホで調べ物をしていた。確か人体の骨格や、筋肉の付き方についてだったと思う。すると、前を小柄な女性が歩いている。大人2人程が通れる幅の歩道の中央を闊歩している。これでは抜かせない。
仕方なしに、少し距離を取りつつも、バスの時間もあるので女性の歩調ギリギリのペースで歩く。もう少し先へ行けば歩道が広くなるので、そこで抜かせばいい。

すると、その女性が急に立ち止まる。スマホを見つつだった私も、それに気が付き慌てて足を止める。ぶつかってはたまらない。なぜ女性が立ち止まったか分からずにいると、女性がこちらを振り返り、一言言った。
「キモ……」
意味が分からなかった。それで思い直す。ほんの十数メートルの間、一定の距離離れた後ろを歩いていた。これでストーカーだと思われたようだ。
正直それに気付いてすぐは、私のスマホを見せて弁明しようとも思ったが、女性はその一言を言い放つと歩き去っていた。怒りもあったが、女性の気持ちも分からないでもない。

実は、私自身もストーカーに近い行為を受けたことがある。大学生の頃に同級生の男に付きまとわれ、精神的に参ってしまい、休学もした。その結果、同じ年に入学したメンバーと一緒に卒業することは適わなかった。だからこそ、一方的に好意を向けられていると思しき男性に付いてこられる怖さはよく分かる。

それを思うと、ストーカーではないかと疑った相手に立ち向かい、毅然とした対応をしたその女性のことは見習いたいと思える。それが勘違いだったことを除けば、だ。