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髙橋宏斗 3年目の躍進と不安要素【2023ドラゴンズ個人成績分析 - 02】

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個人にスポットを当てて2023シーズンを振り返っていく企画の第2弾です。今回は竜の至宝、髙橋宏斗投手の成績を詳しく見ていこうと思います。

本記事のデータは、主にNPB公式および日刊スポーツ様から集計しています。独自集計のデータがほとんどですので、一部実際の数値とずれている場合があるかもしれませんがご容赦ください。もし見つけたら教えて頂けると助かります。



2023シーズン成績まとめ

髙橋宏斗投手の2023シーズン成績は以下の通り。比較しやすい指標については、セ・リーグの先発右投手の平均値と並べて示しています。

髙橋宏斗 2023シーズン主要スタッツ

2023年はプロ入り初の規定投球回到達を達成し、さらなる飛躍の年となりました。スタッツで注目すべきはWhiff%(空振り率: 空振り数/被スイング数)とK%(奪三振率)でしょう。セ・リーグ先発右腕の平均成績はかなり高水準なのですが、髙橋宏斗投手の指標はそれらを大幅にアウトパフォームしています。

一方、課題としてはフォアボールが挙げられます。BB%(与四球率)がリーグ先発右腕平均よりも悪い数値となっており、結果としてWHIPの数値がかなり大きくなってしまっています。

球種別スタッツ

続いて、球種別のスタッツを見ていきましょう。

髙橋宏斗 2023シーズン球種別スタッツ

ストレートとフォークで全体の80%以上を占めています。ここに記載した他に、スライダーが2球、シュート(ツーシーム)が5球記録されていましたが、あまりに少数で誤検出の可能性もあるのでここではカットしました。

ストレートはどうしても被打率としては高くなってしまいますね。一方、フォークのWhiff%や被打率はエグイ数値になっています。評価が難しいのはカーブでしょうか。45%の確率で空振りを奪えていますが、狙われると捉えられることが多く、被OPSは.800を超えてしまっています。しっかりと使いどころを絞ることで輝くボールと言えます。

フォークがエグイって話

さて、フォークの話題が出たのでもう少し視覚的に見てみましょう。フォークの打撃結果をまとめたピッチチャートを示します。

髙橋宏斗 フォークの打撃結果ピッチチャート

見ての通り低めに投げ込めた時の奪三振率がおかしなことになっています。次はボールゾーンも含めて、ゾーン別のWhiff%と被スイング率を並べて見てみましょう。

髙橋宏斗 フォークのゾーン別Whiff%


髙橋宏斗 フォークのゾーン別被スイング率

Whiff%の図から、やはり低めのゾーンは全て高い確率で空振りを奪えていることが分かります。一方、高めに行ってしまうとなかなか空振りが奪えないボールになっているようです。

続いて被スイング率の図を見ると、いずれのゾーンもかなりの確率で打者のスイングを誘っていることが分かります。打者にとっては打ちごろのボールに見えるのでしょう。低めに投げ込める確率を高めていけばさらに手のつけようの無いボールになる可能性を秘めています。

悪運を招くストレート?

フォークというウイニングショットを活かすためには、上質なストレートの存在が欠かせません。髙橋宏斗投手の場合、平均152km/hオーバーのストレートがあるからこそフォークでこれほど多くの空振りを奪えているわけです。

しかし、ストレート自体のスタッツを見てみると、球速の割にあまり良い数字が残せているわけではなさそうです。ストレートのスタッツを、今度はセ・リーグの先発右投手の平均と比較して見てみましょう。

髙橋宏斗 ストレートのスタッツ比較

意外にも被打率・被出塁率・被OPSがリーグ平均を下回っています。この原因ですが、BABIPにあると思われます。

BABIPとは、フェアゾーンに打球が発生した条件だけで計算した打率です。すなわち、三振やホームランなど、守備が絡まないシーンは考慮しません。この指標は、ほとんどの場合で.300前後に収束することが知られています。実際に、リーグ平均のBABIPは.296と、.300に近い数値になっています。

しかしながら、髙橋宏斗投手のストレートのBABIPは.351となっており、明らかにヒットになりすぎです。被長打率が.377とこちらはリーグ平均よりも低いことから、特に鋭い打球を飛ばされているわけではないと思われます。

要するに、「運が悪い」わけです。キャンプの前にお祓いに行くことをおすすめします。

不安要素: 夏場以降の球速低下

最後に少し不安に感じていることを一つ。
下の図は、各登板日の球種ごとの平均球速の推移を示したグラフです。

髙橋宏斗 各登板日の球種ごとの平均球速の推移

8月中旬以降、明らかに全球種で球速の低下が見られます。9月以降はストレートの平均球速が150km/hを下回るようになっています。

本人は「意図的に出力を落としている」といったコメントを出しているので大丈夫だとは思いますが、3月のWBCからフル稼働した1年だったので疲労の蓄積があったのかもしれません。ファンとしてはとにかくケガでないことを祈るのみです。キャンプから実戦に移っていく中で球速が戻るか注意深く見ていきたいと思います。

ところで話は変わりますが、グラフを見ているとフォークとカットボールの球速帯がかなり近いことが分かります。一般的にフォーク(宏斗の場合スプリット)は若干シュート方向に変化しながら鋭く落ちるボールであるのに対して、カットボールは逆方向の変化を持つ球種です。球速帯の近いこれらのボールをどちらも操れるようになると、打者としては厄介この上ないでしょう。現状カットボールの投球割合がかなり少ないので、もう少し高めていっても面白いのかなと思いました。

まとめ

ここまでご覧頂きありがとうございました。
髙橋宏斗投手の3年目シーズンをまとめると、

  • フォークがとにかくエグイ

  • ストレートは球速すごいけど運が悪い

  • 夏場以降の球速低下が少し不安

  • カットボールの投球割合を増やしても面白いかも

といった感じでしょうか。
来シーズンはどんな成績を残してくれるか本当に楽しみです。

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