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涌井秀章 実はモデルチェンジしていた?【2023ドラゴンズ個人成績分析 - 17】

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個人成績分析の第17弾は、(個人的)球界一のイケおじ・涌井秀章投手です。
昨シーズンは夏場に少し苦しい投球が続きましたが、その後リフレッシュを挟んでシーズン終盤はしっかりと安定した投球を見せてくれました。今回は涌井投手の投球内容について、詳しくデータを見ていきたいと思います。

本記事のデータは、主にNPB公式および日刊スポーツ様から集計しています。独自集計のデータがほとんどですので、一部実際の数値とずれている場合があるかもしれませんがご容赦ください。もし見つけたら教えて頂けると助かります。



2023シーズン成績まとめ

涌井投手の2023シーズン成績はこちら。

涌井秀章 2023シーズン主要スタッツ

被打率や被OPSがリーグ平均より少し高く、シーズン全体で見ると苦しんだ印象です。WHIPの数値がかなり高くなっているので、ピンチを背負うイニングが多かったことが想像できますね。

一方、Whiff%(空振り率)・K%・BB%などはリーグ平均程度であり、自滅した印象はありません。BABIP(フェアゾーンに飛んだ打球のみを母数にして算出した打率)が3割を超えていることからも、単純にヒットになる打球が多かったと言えます。

この原因がどこにあるのか、探っていきましょう。

球種別スタッツ

まずは、球種別のスタッツを見ていきましょう。Whiff%と被OPSについてはカッコ内でリーグの先発右投手の平均値と比較しています。

涌井秀章 球種別スタッツ(カッコ内はリーグの先発右投手平均)

昨シーズン投げた球種はストレートを含めて8種類です。柳投手と同じく、多彩な変化球を操れるところが強みです。

この中で目を引くのはやはりストレートでしょうか。Whiff%が平均を上回っている一方で、被OPSはリーグ平均よりも高くなってしまっています。

変化球を見てみると、スライダー・カットボール・フォーク・チェンジアップについては被OPSをリーグ平均以下に抑えることができており、有効な球種になっているようです。

一方で、カーブ・シンカー・シュートについては被OPSがリーグ平均よりも高くなってしまっていますね。この中でカーブについては被スイング率が20%程度であることを考えると、それほど気にする必要はないでしょう。意表を突くことが目的のボールなので、使いどころの問題と言えます。

また、シュートについては投球数が少ないので少し数字が極端に出ている可能性が高いですね。それでも感覚が良くなかったのか、シーズン終盤にはこのボールはほとんど投げなくなりました。(詳しくは後述します。)

というわけで、一つ一つの球種を見ると成績に違いが表れていますが、涌井投手の場合は球種数が多いので、それらの割合を調整することで修正していけるのが強みですね。

変化球を軸にすべき?

さて、上で触れたストレートの成績については真面目に考察していくべきでしょう。ストレートと変化球のゾーン別被OPSを比較してみます。

涌井秀章 ストレート ゾーン別被OPS
涌井秀章 変化球 ゾーン別被OPS

ストレートは多くのコースで.800以上の被OPSとなっています。特徴的なのは低めのゾーンがすべて高OPSとなっているところでしょうか。涌井投手はリリースポイントが低いのかもしれませんね。何でもかんでも低めに集めるのが良いわけではないという一例になりそうです。

一方変化球は、真ん中を除いて全体的に低OPSにまとまっています。このことからも、涌井投手の場合ストレートの割合を減らして変化球主体の配球にしていくのが好ましいと思われます。ちなみに後述しますが、昨シーズン中にはすでに、この球種割合の変化が見られています。

対左打者が課題

続いて対左右別の成績も見てみましょう。

涌井秀章 対左右別スタッツ

Whiff%や被OPSなどすべての項目について対右打者の方が優れた成績になっています。一方で、対左打者はかなり苦手にしているようです。

併せて対左右別の球種割合も見てみましょう。

涌井秀章 対左右別球種割合

右打者に対してはスライダー、左打者に対してはチェンジアップとシンカーの割合が高くなっています。打者から逃げていくボールをメインの変化球に据えている感じでしょうか。ただし、シンカーのスタッツを見る限り、左打者に対する球種選択はあまり有効に機能していないようです。

シーズン途中のモデルチェンジ

ここまでの情報を踏まえて、登板ごとの球種割合の推移を見てみましょう。

涌井秀章 登板ごとの球種割合の推移

夏場以降、成績の芳しくなかったストレート・シンカー・シュートの投球割合を減らしているのが分かります。シュートに至っては、シーズン終盤は1球も投げていません。

代わりにスライダーの割合が増加し、秋以降には新たにフォークを投げ始めています。これらは成績の良かった球種ですし、シーズン終盤は安定したピッチングを見せてくれていたので、このモデルチェンジが功を奏したと言えます。

特にストレートの割合を減らすのは勇気が必要だったかもしれませんが、この修正能力はさすがですよね。

まとめ

ここまで読んで頂きありがとうございました。
涌井秀章投手の2023シーズンをまとめると、

  • スライダー・カットボール・フォーク・チェンジアップの被OPSは低く、ストレート・シンカー・シュートの被OPSは高い

  • ストレートは多くのゾーンで被OPSが高くなっている一方で、変化球はほとんどのゾーンで抑えることができている

  • 対左打者が課題

  • 夏場以降に球種割合を修正し、成績向上

といった感じです。

2024シーズンはモデルチェンジ後の構成で臨むのか、ストレートやシンカーなど成績の芳しくなかった球種の質を改善して元の球種構成に戻すのか、気になりますね。また今年は大野投手や梅津投手など、少し間隔を空けてローテで回って欲しい投手が複数人いるので、涌井投手もそれに合わせて登板間隔を伸ばす可能性もあるのかなと思っています。ケガなどが無い限り、今のドラゴンズの1軍ローテはそれぐらいの厚みがあると思います。

もちろん昨年の成績を上回ってバリバリ投げて欲しいですし、若手に対するアドバイスやスポンサー(笑)としての役割も引き続き期待したいですね。我々ファンとしては、涌井秀章という男がドラゴンズのユニフォームを着て投げていることに最大限の感謝をしつつ、今シーズンも精いっぱい応援していきましょう。

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