折田翔吾 黒田尭之戦 自由自在 2019.11.25(棋士編入試験第1局)
ついに始まった注目の棋士編入試験。
第1局の対黒田尭之四段戦を見てみたいと思う。
【▲黒田尭之四段-△折田翔吾アマ ▲6五歩まで】
先手が初手▲1六歩から早めに端歩を突き越す四間飛車に構えると、後手の折田翔吾アマはミレニアム風の立ち上がり。
最近、四間飛車に対し端歩を突き返す居飛車穴熊がプロの実戦で数局指されている。
先手の趣向はそれを意識したものだろうか。
対して、折田アマは穴熊ではなくこの形を選択したので、用意の作戦だったのかもしれない。
この局面、すぐに見える先手の狙いは2つ。
①△8六歩からの仕掛けに対応して、8筋方面で戦う
これは先手の方が玉が堅いので振り飛車党なら歓迎だろう。
②▲4七銀~▲5六歩で、中央で戦いを起こす
後手が8筋から仕掛けず玉を固めた場合は、角頭を狙って仕掛けるのが自然だ。
後手の角は5三から追われると働きが鈍る。
5筋で戦いが起これば、角の働きの差で振り飛車が良くなる変化がありそうな展開だ。
ちなみに、後手が玉を固めるのであれば、右金は5二ではなく5一→4一→3二のルートが自然。
ここで実戦は△2三銀▲4七銀△1四歩▲同歩△同香と端の逆襲を敢行した。
玉をこれ以上囲わず、このタイミングで端を逆用するのが後手の狙いだった。
形勢はまだ互角だが、注目度の高い対局だけに、端歩を早めに突き越す四間飛車への対抗策として、特にアマ棋界では流行しそうな構想だ。
実戦はこの後、先手が香交換で得た香を盤上に投入したが、後手にうまく受けられ働きの弱い駒となってしまったようだ。
後手が飛車を成り込み、有利で迎えた終盤戦。
【▲黒田尭之四段-△折田翔吾アマ ▲2四歩まで】
後手が好調に攻めているが、▲1四角の反撃をまともに食らうと後手玉も急に寒くなる。
例えばここで後手が一手パスしたとすると、▲1四角△2三歩▲3五歩が一例で、一気に混戦模様となってしまう。
先手としてはうまく後手玉を攻めつつ、入玉も見せつつ粘りたいイメージだ。
後手は、先手に1,2筋の制空権を奪われると、自玉の心配だけでなく、先手玉も寄らなくなるのでかなり厄介だ。
「歩の裏からの香車は受けづらい」と言うが、△2五香と力ずくで攻めるような手はこの場合は通用しない。
▲同桂△同桂▲1四角△2三歩▲2五銀と進むと、攻守が逆転してしまう。
うまく決めたい局面だが、ここから折田アマがオシャレな手順で決めた。
△2六歩▲1六玉△1四歩。
【▲黒田尭之四段-△折田翔吾アマ △1四歩まで】
玉を上に釣り上げ、「敵の打ちたいところへ打て」の△1四歩。
お手本通りの軽快な寄せで、急に局面が分かりやすくなった印象だ。
対して先手は▲1七玉と引いたが、△3九角▲同金△5八竜という大技も決め、折田アマがそのまま押し切って勝利した。
お互いの工夫がぶつかり合った序盤と、折田アマの綺麗な収束。
第一局から今後の五番勝負が楽しみな内容だった。
特に折田アマは、序盤の積極的な仕掛けから、終盤の大技小技を駆使した寄せと、強さが際立つ内容だったように思う。
次局は12/23、出口若武四段戦。
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