さくらんぼさん 2
――その日は本当に珍しい大雪の日だった。
夜明け前から深々と雪は降っていた。
あたしは、趣味の一眼レフを準備した。
あたしは写真を撮ることが好きだ。
朝起きて、カーテンを開けて外を見た。
……どこまでもどこまでも、深々と雪が降り続けていたこの町では、とても珍しい光景だった。
あたしは用意した。
まずカバンを用意した。大きめのショルダーバッグである。
……んで、その中に一眼レフを入れて、雪で濡れないようにタオルを入れて、
目指すは、この街イチの神宮境内である!!
積雪の神宮を写真に撮るために、あたしはさ、朝早く起きて、窓を開けて、積雪をチェックして、……それから、すぐに勢いまかせて電車に乗り、下車してから、足場の悪い雪道を歩いて、しかも、深々と雪が降っているし。
……それでも、ショルダーバッグの中の一眼レフを濡らさないようにかばいながら、ざっくざっくと、積雪の中を歩き続けて……。
ようやく到着した神宮の境内。
誰もいない……当然だ。
こんな大雪の午前にここ神宮に参拝にくるものなんて珍しい。あたしくらいだ。
けれど、あたしは参拝が目的じゃなくって……撮影が目的だった。
パシャッ! と撮った。(撮りまくった)
いつもの通り、シャッタースピードはオートにして、絞りはできる限り思いっきり絞ってみた。
境内の全景をピンボケなしに撮影するためだ。
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