★読書愛好会(19)
部長は東大に行くことに決めました。アメリカには行かないそうです。理由は「リュウ君となるべく近い場所に住んでいたいから」と彼女は答えます。僕との交際を真剣に考えてくれているんですかね。だとしたら僕はとてもうれしいです。
僕はますますやる気が出て、寝ているとき以外は勉強して、この間のテストでは学年二十位になりました。うちの学校で二十位というのは東大受験組がうようよいるゾーンなんです。
それまでは百位あたりをうろうろしていたので、同級生も担任も親もびっくりしてましたね。高三になったら文系クラスに行くという届けを学校に出しました。
担任は、このまま行けば千葉大学文学部は楽勝である。しかし高三になり急に成績が良くなる生徒もいるから油断するなよ、と言っていました。高三の夏から秋にかけて劇的に成績が良くなる人がいるそうです。たぶん部活が終わった三年生が爆発的に勉強するのでしょう。
部長は全国模試のたびに好成績で東大合格は間違いないようです。学部はまだ決めていないようですが。たぶん文系の学部に行くのでは?と予想しています。
僕は週一回部長の家に行き受験指導を受けています。部長のお母さんは部長同様小柄で美人で、たいへん親切です。いつも珈琲とケーキ、クッキー、ドーナツなどを出してくれます。
僕たちはわざとお母さんがいる居間で勉強しています。部長の部屋で二人きりになるとついつい、というのを避けるためです。お母さんがいるため勉強だけに意識を集中できます。
部長のお父さんとは会ったことがありません。毎晩夜遅いそうです。
部長のお父さんはここに名前を書けば誰でも知っている大企業に勤めていて、何らかの役職に就いているようです。一方、うちの父親はあまり有名とは言えない会社の平社員。我が家と部長の家は経済力その他、いろんな違いがあります。でも、僕たちの付き合いの中で、それらの家柄的なものが何らかの不快な、厄介な事柄を呼び起こすことは皆無です。もしかしたら僕たちが結婚するというとき、いろんな障害が出てくる可能性は否定できませんが。
部長の指導により英語、数学、物理、化学、日本史、世界史の勉強のコツを理解しました。あとはひたすら勉強です。
千葉大学の文学部は二次試験で数学があります。リュウ君、これは大きなチャンスなんだよ、と部長は言いました。僕はその意味がよく分かりませんでしたが、部長に言われた通り、部長が使っていた数学の参考書をひたすら暗記しました。そしたら先日の数学のテストで生まれて初めて満点を取り、廊下に名前が貼り出されました。僕は数学が大好きになり毎日夢中で勉強しました。
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