★読書愛好会(4)

三年生男子が夏目漱石の「道草」について書評を発表しました。この先輩は受験勉強を優先しており、部に顔を出すのは月イチぐらいです。進学校のため三年生はこのやり方が許されています。

先輩が部活に来ると女子部員のテンションが明らかに変わります。全く変わらないのは部長だけです。部長は男子より勉強が好きなんでしょう。

先輩は背が高くて美顔のため女子生徒にとても人気があります。バレンタインデーにはチョコレートが二百個と聞き、驚きました。なお、僕は生まれて以来、ゼロを更新中です。(笑)

「道草」は主人公が養父に再三借金を申し込まれ困惑する話です。実はこの作品には漱石の自伝的要素があるのです。

漱石は幼児のころ、他家に養子に出されましたが、漱石成人後、その養父から借金を申し込まれた、ということがあったのです。漱石はその時の体験を小説にしました。

実家と養父の間で金銭をめぐり揉め事もあったようです。さらには漱石を実家に戻す、というようなこともありました。まるでキャッチボールですよね。

あの手この手で主人公からお金を取ろうとする養父。さらには、実の姉も小遣いを要求します。困惑する主人公。主人公夫婦の仲はイマイチです。「門」の夫婦とは天地の差があります。

漱石の作品には珍しく魅力的な人が一人も出てこない作品です、と先輩は述べていました。

僕は「道草」を読んだことがないのでさっそくAmazonからダウンロードしました。なんだか重たい気分になる小説です。しかし、当時の文壇の、私小説大好きな作家たちからはすごく評判が良かったのです。一方、漱石の弟子たちの多くはこの作品を好みませんでした。師匠の心の闇を初めて感じ、当惑したのかもしれません。

僕が思うに、漱石は幼年期に体験した、悲しい、切ない、どんよりした失望感を長らく胸に留め、それを少しでも解消したくてこの作品を書いたのかな、と。

人間誰でもストレスは避けられない。

父に「お父さんはどうやってストレス解消をしてるんですか?」と尋ねました。父は化学薬品を工場に売る仕事をしていて毎晩遅く帰ってきます。

父は言いました、お前の顔を見ると辛いことは全部忘れるんだよ、と。

嘘つきめ!

僕の心の中には悪魔が住んでいるのですがその悪魔がそのように言いました。

あなたの心の中にも悪魔がいるでしょう?

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