★読書愛好会(9)
川上未映子は眼鏡をかけたらうちの部長そっくりなんですよ。目が細く、少し宇宙人っぽい雰囲気。部長に冷たい視線で見られるとゾクゾクします。(笑)
さて、「乳と卵」の主要人物は
女性a→四十手前。大阪の飲み屋で働く。独身。豊胸手術に強い関心を持つ。
女子b→小学六年くらいかな。aの娘。なぜか口頭ではなく、筆談で周囲との会話を行う。かなり精神面で葛藤を抱えている印象がある。
女性c→aの妹。東京在住。仕事は決して順調とは言えない様子。
まず思ったのは、この三人はすごく仲良しといえばいいのか、全員、それぞれが互いに対して強い好感を持っている。家族愛にあふれた物語だ。
僕はとても羨ましいと思った。我が家には全く存在しない種類の愛。我が家ではそれぞれの自己愛が決して交わらないひんやりした光線みたいに飛び交っている。
お父さん、お母さん、あなたたちはどうして結婚したの?と僕は彼らに尋ねてみたい。現在の不和を回避するためにどんな努力、和解に向けた工夫をしたの?と聞いてみたい。この世のアンラッキーを全部相手のせいにしてやり過ごしてきたんじゃないか。不和というゴールに向けて気持ちの悪い努力をしたんじゃない?
父は以前、リュウ(僕の名前)の成績が悪いのは君の家系の影響だよね?と母に言った。愚かな母親はそのまんま、愚痴としてそれを僕に伝えた。それ、僕に伝える必要のある話なのですか?
我が家の両親の、世にも稀なる愚かさをギネスブックに登録する方法があったらぜひ教えて欲しいです。
さて、乳と卵ですが、
bはわざと筆談をやっていることで分かるとおり少々反抗期みたいな感じだが決して母親を嫌っていない。すごく大切に思っているわけです。それは彼女の手記を読めば分かります。
そして物語の終盤、abは激しい親子喧嘩みたいなことをする。かなりの修羅場ですよ。僕は驚きましたね。その激しさに。自分自身に卵をぶつけるというのは非常に単純なメタファーですが僕はその単純さをすごく好ましく思ったのです。せつなさと情愛に心打たれました。
このような場面を書ける川上未映子は天才だと思いました。眼鏡をかければ部長そっくりな有名作家の作品を今回初めて読みました。
この作品に男はほとんど出てこないです。女性の性に関する、赤裸々な、どぎついくらいの詳細が記されています。夏目漱石や村上春樹でもここまで詳しくは書けないでしょうね。
なお、書評発表の段取りは
・川上未映子に関する簡単な説明
・あらすじを要約して話す
・僕の感想
・質疑応答
だいたいこのような内容です。今回配布資料は一ページでいいかな。
部会は四時にスタートして五時に解散です。たまに部長から「このあと、マックに行きたい人はどうぞ」というお誘いがありますけどほとんどの部員は帰宅します。
aは豊胸手術を強く希望していますがその理由についてははっきり書かれていません。女性に詳しくない僕は全く想像できません。もしかして大人になったら理由が分かるかもしれないです。
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