★国語教師(42)

夏目漱石の「坊ちゃん」の粗筋をどうやって他者に説明するか。

・幼年期は両親、兄、使用人の老婆がいる家で育った。

・坊ちゃんはワンパク坊主のため両親にあまり愛されていなかったし、兄との仲も良好ではなかった。

・しかし使用人の清(きよ)だけは坊ちゃんを深く愛した。

・やがて母が、次に父が死んだ。

・兄は実家を売った金の一部を坊ちゃんに渡した。

・坊ちゃんはその金で物理学校に行き数学の教員免許を取得した。

・赴任先は四国だった。

・着任早々、生徒たちが宿直の坊ちゃんの布団にバッタを入れたり深夜に騒いだりして坊ちゃんに嫌がらせをした。

・学校には嫌な感じの教頭とその子分がいた。

・教頭は教師aと婚約間近だったマドンナという女性を少々の策略により口説き落とし、aから略奪した。

・教頭はこの経緯をよく知り、教頭に批判的な教師b(あだ名は山嵐)を学校から追いだそうとする。

・坊ちゃんと山嵐は共同して教頭、子分に鉄拳制裁を加え、学校をやめる。

・坊ちゃんは東京に帰り、鉄道会社の社員になって清と暮らす。

だいたいこんな感じでしょうか。

もし「坊ちゃんを400字以内で要約しなさい」という宿題を出したら生徒たちはどんなことを書くかなあ。非常に興味深いですが僕はそのような宿題を決して出しません。200人分読まないといけないですからね。一人10分として33時間かかります。ちゃんと読めないのにそのような宿題を出すのは生徒に不誠実だと考えています。

何かを要約するっていうのはけっこう良い思考訓練だと思いますね。他者が提供した大量の情報を取捨選択して、大事な、その文章なり作品のエキスだけを抽出するのです。それなりの知性が必要ですよね。

若い頃受講したビジネススキルの講座で、誰かの長い話を要約するという訓練がありましたね、そう言えば。

たとえばですね、坊ちゃんは団子、蕎麦を食べたり温泉で泳いだことを生徒たちに揶揄されるわけです。それを要約文に入れても別にいいですけど話が長くなっちゃうんですよね。でも、その話をどうしても要約文に入れたい生徒もいるんじゃないかなあ。

では、坊ちゃんを読んだことのない生徒に「面白そう、是非読んでみたい!」と思わせるような要約文は?

結末というか鉄拳制裁のあたりは書かないほうがいいかもしれないですね。坊ちゃんチームと教頭チームの対立を少々大袈裟に書いて「さて、結末は?」みたいな感じにすれば良いかも。

要約文、感想文というのは書き手の意志により、いろんな内容に変化するんですよね、当たり前ですけど。知性感性、百人十色ですからね。

たとえば村上春樹の「ノルウェーの森」ですがAmazonのレビュー欄には以下のような感想が掲載されています。

【村上作品はどれもそうなのだろうが、今作も性描写が多くて気持ち悪い。

主人公が自分から求めたわけでもないのに複数の女性と自然に性行為をする展開は陳腐なエロゲーを連想させる。

ストーリーや内面描写が陰鬱で辟易する。

これは好きな人もいるだろうが、自己陶酔したメンヘラみたいで個人的には受け付けない】

村上春樹の作品には確かに性描写がいろいろと出てきますけど僕は不快感を覚えたことが一度もないんですよ。しかし、不快に思う人々もたくさんいる。

これは感性問題ですので議論するのはあんまり意味がないと思いますね。好きか嫌いかで止めておけばよい。嫌いな理由は真剣に議論しなくても良い。(笑)

今夜の炊事当番は長次郎で、カレーを作ってくれたんですよ、美味しかったなあ。しかもトッピングがトンカツ、チキンカツ、ハンバーグの中から選べるんです。みんな美味しい美味しいと食べてました。

ワイワイガヤガヤ、家族七人の楽しい食事。やがていつかはメンバーが徐々に減っていく。それを思うと少しせつない気持ちになりますね。

睦美と二人きりになったらどうしようかな。南の島に行こうかしら。

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