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74DAY ‐凄い気になった小説だったので紹介してみた(朝井リョウ 「正欲」 編)2‐

 本題に入る前に今日起きた嬉しい出来事を書きます。自分の中学校時代のクラスメート兼親友がこのブログを見てくれました。ただのそれだけですがほんとに嬉しかったです。またいつか会えたらいいです。(お前!もしこのブログ見てたら、今度一緒にエヴァ新劇場版見ようぜ)それでは前回の続きどうぞ。

 その後、持て余した時間の中で息子が妻のスマートフォンを頻繁に触るようになり、事態は変化した。息子は、「不登校であること」かつ、「これからの時代、学校はもう必要ないと説くこと」で注目を集めている小学生インフルエンサーに傾倒していったのだ。

【僕たちは一人一人違うのに、同じ格好で同じ授業! バカみたい!】

【学校ってもう古くないですか? 自分が興味あることを勉強した方が絶対にいい!】

【僕から見れば、みんな洗脳されてるみたい。学校の勉強、社会出て、役に立つの?】

【これからは個人の時代、学校で学ぶことにはもう、意味がない! 社会は変わった! そのことに気づけてない大人が多いだけ!】

 動画には、息子と同世代だろうか、線の細い少年が忙しく両手を動かしながら話す様子が映っていた。息子はこの動画が終了した後、まるでその少年の隣にいるような顔をして、「俺もこの子みたいに、学校に行かずに、自分の力でやりたいことをやってみたい」といった。

 「私は正直、無理やり学校に行かせることが正解なのかわからない」その夜、寝床につくと、枕を並べる妻が不意にそうつぶやいた。妻は自分の方に体を向けているわけではなく、仰向けに寝転んだまま、まっすぐ天井に向かって話していた。「結局学校側は、クラス内アンケートの結果いじめは認められませんでしたって繰り返すだけでしょう。また無理やり学校に通わせたって、嫌なことがあったら、またすぐに行けなくなっちゃう気もするんだよね。(子供の名前)って優しい子だからさ、男の子同士の空気とか遊び方とかが合わないのかもとは思ってたの、幼稚園くらいの時から。私立だけどいろんな子がいるし、そもそも人がたくさんいる場所が苦手なのかな、とか。」隣で自分は、目を閉じていた。その話をあまり聞きたくない故の行動だったが、暗闇の中で目を閉じると、聴覚はずっと敏感になった。「学校だけがすべてじゃないって言葉に、あの子は励まされたんだと思うの。時代的にも、学校に行って就職してっていうのとは違う形で生きていける社会になりつつあるのかもしれないし。」

 スクールゾーンを抜け、街の景色が住宅街から市街地のそれへと変わる。地下鉄の入り口に滑り込みながら、自分の意識が家庭の父親から一人の社会人に代わっていくのを感じる。

 【社会は変わった! そのことに気づけてない大人が多いだけ!】

 検察という組織が目指す社会主義の実現、その一翼を担う人になりたい。だけど最近は、社会主義という言葉のうち、「社会」の方が自分から遠ざかっている気がした。(朝井リョウ著 「正欲」の一部を少し変更して抜粋)

 いままで書いた文章は、本の序盤のところどころの抜粋に過ぎないですが、現代社会における問題や人間の心情をリアリティあふれる世界観で表現していてとても興味深い作品です。是非朝井リョウさんの「正欲」というタイトルで検索してみてください。(前回のブログに記述の誤りがあったので少し直しました、すみません)

 

 

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