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73DAY ‐凄い気になった小説だったので紹介してみた(朝井リョウ 「正欲」編)1‐

職業 検事の一児の父親 寺井啓喜の話(フィクション) 

息子の私立小学校合格。内装にこだわった一軒家。それらが組み合わさったとき、これまでの四十数年の人生がまるでパズルのように美しく組み合わさったと感じた。その後、息子が三年生になったあたりで、奇跡的に合格した小学校に通わなくなるなんて全く想像してなかった。息子の第一志望合格に対し、職場からも「息子さん、よかったな」等と祝いの言葉を受け取っていた。それなのに。

 不登校になったのはもう一年くらい前だが、今から半年以上前、息子は久しぶりの登校を試みた。当時はまだ、学校に通えなくなったことに対して罪悪感を抱いていたらしく、小学四年生の四月のうちの数日、ランドセルを揺らして家を出ていった。だが、帰りのホームルームが終わるまで教室にいることができなかった。途中で疲れてしまう。息子は帰宅後、そう言って項垂れたらしい。

 繊細なわが子をもう一度学校に戻すことを酷に思う気持ちは、ある。ただ同じくらい、このまま自宅という絶対的に安全な空間の中で息子が守られ続けていいわけがないという焦りもある。しかし、愛情不足、過保護、育児放棄、子離れできない毒親。今の息子に対し学校に通えと言っても通わなくていいと言っても、何かしらネガティブな言葉をあてはめられる気がする。誰も正解を教えてくれないし、何を選んでも間違いだと言われてしまう気がする。(朝井リョウ著 「正欲」の一部をを少し変更して抜擢。主な内容などは変えておりません。)

 

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