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【読書録012】好きなようにしてください

音楽関係の本ではありませんが音楽家の方にオススメの本を紹介します。

『好きなようにしてください』

著: #楠木建 2016年

■実はこれは、

私が尊敬する楠木先生の著作群の中で、最も強烈に影響を受けた本です。
411ページもある極厚の本。

内容は楠木先生が一般読者から50個もの相談を受け、とりあえず「好きなようにしてください」と答えて、その行動基軸にアドバイスを与えるもので、
(「好き勝手にすれば?」ではなく「君の衝動や展望に忠実に行動したまえ」という意味)
分厚さの割にはすごく読みやすいパッケージです。

この本の中で、

「column2 仕事の原則(僕バージョン)」
(154〜166ページ)

という書き下ろしコーナーがあるのですが、これが本当に楠木先生を理解する上で必読の、素晴らしすぎる内容。

先述のとおり、私の価値観の元となったもので、実はあまりあけすけに教えたくない。
ですが、
コロナ禍・緊急事態の最中だからこそ大切にしたい基礎的な考え方だと心の底から思うので、自戒の意味も込め、ごっそり引用させていただきます。

仕事をしている方はそのまま仕事論として読んでも良いし、
音楽や絵画その他の芸事をしている方は、その創作や活動の心構えとして当てはめて良いと思います。
 

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■仕事の原則10か条
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1.「仕事と趣味は違う」の原則

自分以外の誰か(価値の受け手=お客)のためにやるのが仕事。
自分のためにやる自分を向いた活動はすべて「趣味」。
趣味は家でやるべき。
仕事と混同してはならない。
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2.「自己評価はなしよ」の原則

仕事はアウトプットがすべて。
ただし、アウトプットのうち、「成果」と言えるのは客が評価するものだけ。
たとえば、商品を作って売りに出す。
これはアウトプット。
その商品が客に喜ばれ、必要とされ、受け入れられる。
こちらが成果。
仕事の達成をアウトプットを出すことそれ自体に求める。
このすり替えが自己欺瞞。
こうなると仕事が原則1の「趣味」になってくる。
したがって、仕事の自己評価の必要は一切なし。
自分が納得する仕事をしていればそれでよし。
あとは客が評価をしてくれる。
客に評価されなければそれでおしまい。
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3.「客を選ぶのはこっち」の原則

客を選ぶのはこちらの自由。
全員に受け入れられる必要なし。
というか、それはほぼ不可能。
こういう人のためにやるというターゲットをはっきりさせて、その人たちに受け入れられればそれでよし。
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4.「誰も頼んでないんだよ」の原則

仕事の根幹にあるのは当人の自由意志。
仕事は本当のところは誰からも頼まれていない。
誰にも強制されていない。
すべて自分の意志でやっていること。
にもかかわらず、仕事が成果につながらない時、他者や環境や制度のせいにする。
これ最悪。
仕事の根幹にあるはずの自由意志の否定になる。
土台が揺らぐとすべてがぐらつく。
まともな仕事にならない。
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5.「向き不向き」の原則

やり続けてもどうしてもアウトプットが出ない、もしくは、アウトプットが出ても客が評価する成果にならない。
これを「向いてない」という。
つまり才能がない。資質、能力がない。
これはどうしようもない。
だから・・・
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6.「次行ってみよう(ただし、近場で)」の原則

向いていないことが判然としたら、さっさと別のことをやるべき。
つまり「ダメだこりゃ、次行ってみよう」。
ただし、だからといってゼロからやり直したり大転換する必要なし。
本当に向いていない方面には、そもそも手をつけないもの。
次に行くべきところは意外とそれまでやっていたことの近所にある。
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7.「自分に残るのは過程」の原則

仕事のやりがいは、自分の納得を追求する過程にある。
客にとっては結果(成果)がすべて。
仕事の成果を自分で評価してはならない。
しかし、自分のなかで積み重なるのは過程がすべて。
仕事の過程で客におもねってはならない。
おもねると、短期的に「成果」が出たとしても続かない。
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8.「仕事の量と質」の原則

客側(自分ではなく)で記録に残る成果の集積を「仕事の量」という。
これに対して、客の記憶に残る成果が「仕事の質」。
一方で、自分の記憶に残る成果、これを「自己満足」という。
自己満足はわりと大切。
ただし、自己満足はあくまでも舞台裏の話しで、表に出してはならない。
自己満足について客に同意や共感を求めるのは論外。
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9.「誘因と動因の区別」の原則

仕事の量を左右するもの、これを「誘因」(インセンティブ)という。
ただし、誘因では仕事の質を高められない。仕事の質を左右するのは「動因」(ドライバー)。
誘因がなくても自分の中から湧き上がってくるもの、それが動因。
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10.「無努力主義」の原則

(中略)
それが「努力」かどうかということは当事者の主観的認識の問題です。
僕に言わせれば、「努力しなきゃ・・・」と思った時点でもう終わっている。
もちろん何かがうまくなるためには努力投入、しかも長期継続的なそれが必要なわけですが、本人がそれを「努力」と認識している限りは投入の質量ともにたかが知れているし、何よりも持続性に欠ける。
質量ともに一定水準以上の「努力」を継続できるとすれば、その条件はただ一つ、「本人がそれを努力だとは思っていない」、これしかないというのが僕の結論でありまして、これを私的専門用語で無努力主義と言っています。
つまり客観的に見れば努力投入を継続している、しかし当の本人は主観的にはそれをまったく努力だとは思っていない。
これが理想的な状態。
無努力主義の本質は「努力の娯楽化」にあります。
要するにその対象が理屈抜きにスキだということ。
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(引用終わり)

■天才でない僕ら凡人は、

すでに「才能というのは結局、たゆまぬ努力の賜物」ということを知っています。

しかし「それができないのが凡人」というのもまた真実。
どないせぇっちゅうねん。

努力は、インセンティブ(外発的動機)がないとなかなか続きません。
分かりやすくいえば報酬(富・名声・地位・権力)の獲得かな。
卑近な例でいうなら「誰かが認めてくれること」も含まれる。

しかし困ったことにそれらを獲得しても、獲得そのものに慣れてしまった頃には刺激がなくなって、いつしか努力のし甲斐がなくなって、やはり長期的に続かない。

ひたすら続けるには、ドライバー(内発的動機)が必要になります。
内発的な、努力を努力と思わせない、ツラい状況でも強く自分を保てる、人を自己実現に向かわせる、無限大の達成動機、心のガソリン。

それが、
「好き」という力。

「好きなようにしてください」の真の意味を、考えておくべき本です。
 

※楠木先生はbluedogsというバンドで
↓ベースを弾いてらっしゃいます。
https://ameblo.jp/bluedogsweb/
(バンド公式ブログ)


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