時給1600円!? 金額交渉でわかった成功の「コツ」とは
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こんにちは、Dr.心拍と申します。普段は勤務医として働いていますが、時間外や休日の隙間時間を生かして「ライター」としても活動しています。
この連載では、医師として勤務しながらどのようにライターとして活動するに至ったか、どんな苦労ややりがいがあるのかなどを、読者の皆様に共有させていただきます。医師の副業として「ライターもありかも?」と思ってもらえたら幸いです。
前回は、医師ライターがいろいろトクした「経費」についてお話ししました。
月100万円超の収入も夢ではない副業としての医師ライター。しかしもちろん、最初から高額案件を受けられたわけではありません。なんとか単価をあげようと金額交渉をした結果、あることに気が付きます。
今回は、スタート直後の苦労談、ライターとしての副業で金額交渉をする際の「コツ」をご紹介します。
駆け出しの案件、時給換算してガッカリ?
今でこそ、副業としてのライター業で、多いときは月100万円以上の収入を得ることもあります。しかしながら、当然ですが、最初は安い金額からのスタートでした。
まず、執筆する文字数あたりの報酬金額が、現在とは大きく違っています。
現在はだいたい文字単価でいうと1文字10~20円程度、2000文字の記事を1記事執筆すると2~4万円という感じです。しかしながら、最初のころは1文字2円程度。4000文字書いたとしても、原稿1本8000円です。
しかも、ライターの経験も浅かったことから、記事の構成やリサーチにも時間がかかってしまい、記事はなかなか完成しませんでした。何度も調べ、書き直し、気が付いたらかかった時間は約5時間。時給に換算すると、なんと1時間1600円の稼ぎでした…。これなら学生時代に行っていた家庭教師のアルバイトのほうが高いです。なんだか悲しくなりました。
実はこの『1記事4000文字』、今ならおそらく半分、2~3時間以内には執筆できると思います。執筆時間を短縮するための工夫については、過去記事『「ネタがない」「時間がない」を解決する、医師ライターの技」でも少し触れていますので、お読みいただけると助かります。
いざ金額交渉! クライアントの回答は…
これでは効率が悪すぎると考え、ある時、クライアントに金額交渉することを決意しました。まだ受注できると決まっていない案件について、まずはお金の話はせず、具体的なテーマをいくつか提案しました。するとなかなかの好感触で、受注できそうな雰囲気のお返事がきました。
しかし、この案件も1文字2円。それまでのやりとりから「金額交渉もいける!」と考え、文字単価10円を思い切って切り出してみました。すると相手から…「ご提案は素晴らしく、ぜひ執筆をお願いしたいところなのですが、予算面がどうしても折り合いがつかず、今回は依頼を見送りさせていただきます」と。
受注目前で、その案件はほかへ流れてしまいました。それまでやりとりで費やした時間はゼロ円に…。
交渉失敗の原因は意外なところにあった!
どうしてダメだったのか、今後のためにその案件をよくよく見直してみました。金額交渉をしてはいけなかったのか? そもそも提案した記事テーマに問題があったのか?
…そうではありません。そもそも依頼元は「仲介」で、さらにその上流にエンドクライアントがいたのです。私が交渉した仲介者も、そのエンドクライアントから受注し、その案件を発注する先を探している、という構図です。
あとから聞いたところによると、仲介者が文字単価2円くらいで発注している場合、一般的にはエンドクライアントからは文字単価5円くらいで受注していることが多いそうです。文字単価2円から10円へのアップを交渉しましたが、仲介者は10円で発注してしまうと赤字になってしまうのですね。
この経験から学んだことは、高額案件を受注するには「コツ」が必要だということです。「直接案件」と呼ばれることもありますが、当然ながら、仲介者からの発注を受けて記事を書くのではなく、エンドクライアントから直接お引き受けするほうが金額も高くなります。そして、金額の交渉も通りやすいというのが実感です。
それ以来、依頼元が直接の発注者なのか、仲介者なのかを意識するようになりました。仲介者の場合は文字単価も上がりにくいため、受注も交渉も積極的に行わず、可能な場合は直接お引き受けできる仕事を優先するようにしています。少しずつ実績を積み、依頼や相談も増えてきて、1文字あたりの金額が高いお仕事もできるようになりました。
まとめ
今回は、お金にまつわる、駆け出し当初のトホホな出来事や、高額案件を獲得するためのコツについてご紹介しました。
当時はそもそも仲介者がいる可能性について考えていませんでした。今だったら具体的な提案の前に、仲介者なのか、あるいは直接の発注者なのかを確認していると思います。もしかしたら、もう少し妥協して安い単価で提案していたら受注できていたのかもしれないと、少し反省しています。
こうした失敗を乗り越えて、今ではある程度収入を得られるようになりました。ライターをやってみようという方は、ぜひ参考にしてみてください。
それではまた、ライターとしての活動をご紹介させていただきますね。
【著者プロフィール】
Dr.心拍 解析・文 (Twitter: @dr_shinpaku)
https://twitter.com/dr_shinpaku
呼吸器内科の勤務医として喘息やCOPD、肺がんから感染症まで地域の基幹病院で幅広く診療している。最近は、医師の働き方改革という名ばかりの施策に不安を抱え、多様化する医師のキャリア形成に関する発信と活動を行っている。また、運営側として関わる一般社団法人 正しい知識を広める会の医師200名と連携しながら、臨床現場の知見や課題感を生かしてヘルスケアビジネスに取り組んでいる。
各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆を行うだけでなく、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザーも行う。また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行い、事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。