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大腸癌(医療従事者向け)

■疾患情報

大腸癌とは、大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生する悪性腫瘍である。日本において、大腸癌の罹患数・死亡数はともに増加しており、2020年の罹患率は、男性は肺癌に次いでワースト2位、女性は乳癌に次いでワースト2位になると予想されている。
50歳過ぎから年齢とともに罹患率が高まる。
大腸癌の90%以上は腺癌である。大腸癌の発生部位としては、「結腸」と「直腸」の比がおおむね2:1となっている。S状結腸癌と直腸癌だけで全体の半分近くを占める。また大腸癌では同時性多発癌を3~5%に認める。
大腸癌は、進行度によってStage 0 - Stage Ⅳに分類される(大腸癌取扱い規約[第8版])。
Stage 0に対しては、内視鏡的切除術が行われる場合が多い。Stage Ⅰ~Ⅲに対しては外科的切除が行われ、リンパ節転移を有するStage Ⅲには術後補助化学療法が行われる。Stage Ⅳに対しては、肝転移や肺転移などが切除可能と判断される場合には外科的切除が行われる場合も多い。手術が不可能な場合には全身化学療法が施行される。


■診断
便の免疫学的潜血反応を2日間続けて検査した場合、陽性者のうち大腸癌が発見される確率は約4%である。
早期癌ではほとんど症状を認めることはなく、なんらかの症状を呈する場合は、進行癌である場合がほとんどである。直腸、S状結腸などでの左側大腸癌では腹痛、腹部膨満感などの腸閉塞症状を呈する場合が多い。上行結腸、横行結腸などの右側大腸癌では、貧血、黒色便、腫瘤触知などが認められることが多い。大腸癌のリスクファクターとしては、飲酒、喫煙、肥満、加工肉の摂取などが報告されており、遺伝性を有する大腸癌としては、大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)がある。

便の免疫学的潜血反応の感度は72~78%で、特異度は98%である。潜血反応陽性で、大腸癌が発見される確率は約4%であり、大腸癌の確定診断のためには大腸内視鏡検査が必要である。一方、進行大腸癌があった場合でも、便潜血反応陽性率は80%である。
注腸検査の大腸癌に対する感度は84%で、特異度は97.5%である。便潜血反応や注腸検査で大腸癌が疑われる場合は、確定診断のための検査が必要になる。
全大腸内視鏡検査の大腸癌に対する感度は96.7%で、特異度は98%である。大腸内視鏡検査では、内腔の観察と直視下での生検を行う。
大腸腫瘍(ポリープを含む)の担癌率は5mm以下で0.65%、10~15mmでは35%、21mm以上では85%である。
大腸癌の早期診断、スクリーニングには、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)は全く役に立たない。

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