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はしか(麻疹)について

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
日本国内で「はしか」の感染者が確認され、ニュースで警鐘が鳴らされており、不安を感じる人達も多い様です。正しく知って不安なく対応するために、はしかについてまとめてみました。
最後に、感染症対策についての記事へのリンクも載せておきましたので、確認が必要な場合はご活用下さい。


【「はしか」はどんな病気?】

【「はしか」「麻疹」と言う名前の由来】

「はしか」は正式には「麻疹 measles」と言う病名の感染症です。
麻疹と言うのは、特徴的な皮疹が麻の実の様に見えるから名付けられた、と言われています。
俗称である「はしか」については、「芒 (のぎ)(稲や麦などイネ科植物の穂先の尖った針状の部分)」の古い呼び方である「はしか」が由来とする説や、「チクチクして痒い」ことを表現する「はしかい」と言う言葉に由来すると言う説など諸説あります。
いずれにせよ、稲や麦などの穂先のとがった針状の部分に触れるとチクチクヒリヒリする感じがするらしく、それが麻疹で皮疹が出た皮膚の症状に似ているから、という訳です。

【はしかはウイルス感染症】

はしかは、紀元前6世紀頃から存在していると推測されており、天然痘と合わせて人類を苦しめた二大感染症と言われることもあります。
はしかは麻疹ウイルスと言うウイルスに感染することで発症します。麻疹ウイルスは、パラミクソウイルス科の一本鎖RNAウイルスで、エンベロープを持っています。
脂質と蛋白質で出来たエンベロープを持っている為に、麻疹ウイルスは、熱、紫外線、酸、界面活性剤などで容易に不活化(感染性が無くなること)され、空気中や物体表面で感染性を維持出来る時間は短いと言われています。

【近年における世界的流行の傾向】

実は、はしかは感染者がここ数年世界的に増加傾向にあり、特に中東地域やインド、インドネシアなどで増加しています。新型コロナウイルス感染症の影響でワクチン接種が行き届かない国や地域が増えた為に免疫を持たない感染しやすい人が増え、渡航制限緩和に伴い人流が活発になり感染が広がっている、と考えられています。
アジアやアフリカなどの発展途上国では子供が感染の中心ですが、日本も含めた先進国では大人の感染が多いのが特徴とされています。

日本では2007年に高校や大学で、はしかの大規模感染が発生し、高校73校、大学83校が休校すると言う前代未聞の事態になりました。
1978年に小児に対してワクチン定期接種が開始されて以来、はしかの患者数は100‐1000分の1に減少し、「一度免疫がついたら二度と感染しない」と言うのが通説だった為に、医療関係者はかなり驚いた事例でした。
その後、学校入学時の抗体検査とワクチン接種が徹底して行われ、2015年にWHOから「土着ウイルスがいない『排除状態』になった」と認定され、国内での感染は海外から持ち込まれた少数事例のみとなっていました。そういう状況の中で感染事例が増えているので、問題視されているんですね。

【はしかの症状とは】

はしかの主な症状は、発熱や咳、特徴的な皮疹、目の充血などです。
発熱は2日ほどで下がった後に再び40℃近くまで上がり、1週間ほど続きます。

発疹は発熱や咳などの症状が出始めてから数日たたないと出ないため、最初のうちに症状だけで診断することは難しいです。免疫機能が低下していたりすると、合併症として肺炎や脳炎が引き起こされ、重症化する事例もあります。特に脳炎については、約1000人に1人の割合で起き、亡くなってしまうこともあります。

また、はしかが治って5年以上経過してから、10万人に1人の割合で「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という病気を発症することがあります。SSPEは、麻疹ウイルスが中枢神経系に潜み、長い潜伏期間を経て発症します。それまで元気に暮らしていたにもかかわらず、急に日常の行動が出来なくなったり、異常な行動が目立つようになったりすることがあり、亡くなることもあります。

【はしかは感染力が桁違いに強い】

はしかは、感染した患者の咳やくしゃみにより飛散する体液飛沫を介した飛沫伝播、飛沫が付着した環境表面に触れることで伝播する接触伝播だけでなく、新型コロナ感染症で話題になった、微細飛沫(エアロゾル)や飛沫核などによる空気伝播を起こすことで有名です。このため感染力が極めて強く、免疫がない場合や免疫機能が低い場合には、感染者と同じ室内にいただけでほぼ確実に感染するとされています。

免疫の無い集団内で感染対策が取られていない場合に、患者1人から何人に感染を広げるかを示す基本再生産数は「12から18」とされます。新型コロナウイルス感染症の基本再生産数は「2から3」でしたから、如何に感染力が強いかが分かるでしょう。

【はしかの治療薬は存在しない】

そして、インフルエンザや新型コロナなどの様な抗ウイルス薬は存在しないので、症状を抑える対症療法をしながら、患者自身の免疫機能によりウイルスの増殖を抑え込み回復するまで待つしかありません。

日頃から体のメンテナンスを意識して行っていれば、症状も重症化せず早く治る可能性を高められます。逆に言えば、不摂生や持病などで免疫機能が落ちている様な場合は、重症化しやすいので危険です。これは、はしかに限らず感染症全般や他の病気にも言えることですけどね。

そして、はしかは「一度かかると二度かからない」とも言われており、その様な性質から、ワクチン接種が極めて有効な感染症としても有名です。

ワクチンは弱毒化生ワクチンが使われており、効果を高める為に2回接種が基本となっています。
副反応としては1回目の接種後7日前後に発熱が20‐30%、皮疹が約10%に報告されています。稀な副反応として、脳炎や脳症が接種100万‐150万回あたりに1例程度報告されていますが、自然感染時の発症率(感染者1000人に1人)よりは遥かに低いので、利点の方が大きいとして許容されているのが現状です。ちなみに1回目で免疫が出来ていることが多いので、2回目接種では副反応はほぼ出ないことが多いです。

【特にワクチンが必要な人とは】

1972年(昭和47年)以前に生まれた50代の人は、麻疹ワクチンの定期接種が始まっていなかった為、麻疹ワクチンを接種していない可能性があると言われていますが、定期接種が始まる前の世代では幼少期に自然感染しており抗体検査で陽性となる場合も多いので、年代だけで判断することは出来ません。まずは抗体検査をした上で、ワクチン接種が必要かどうかを判断すべきですね。

また、学校の先生や保育士、あるいは医療関係者など、子供や患者と接する機会の多い人、ならびに流行事例のある海外に長期に出かける人などは、あらかじめ抗体検査を行い、免疫が無い場合にはワクチン接種をして免疫をつけておくことが求められているので、その様な職業の人達は、はしかに対する免疫はあると考えて良いです。

【妊娠中の女性は特に注意】

妊婦がはしかに感染すると合併症のリスクが高く、流産や早産を起こしやすいと言われています。しかしながら現在普及している麻疹ワクチンは、ウイルスの毒性を弱めた「生ワクチン」なので、妊娠中に接種を受けることは適当ではありません。ですから、妊娠を希望する人は、あらかじめ抗体検査をして、必要ならばワクチン接種をしておくことが重要です。

【基本的感染症対策とは】

感染症全般に共通する感染対策と感染時の対策については、下記過去記事にまとめてありますので、興味のある方は読んでみて下さい。
はしかにかかってしまった場合は、感染力が極めて強いため、コロナ以上の隔離と内外気換気が重要になることは意識しておいて頂くと良いかと思います。

【本気で健康的な生活をしたい人へ】

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