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柔軟性が高過ぎるのはむしろ危険

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

スムーズな動作の為には解剖生理学的な可動域内でフルに関節を動かせることが大切だ、と言うことは事実ですが、過剰な柔軟性は逆にトラブルの原因になることもあります。

【「体が柔らかい」と「関節が弛い」の違い】

「体が柔らかい」と言う言い方でも表現される柔軟性は、腱の柔軟性や関節可動域が適度であり、可動域を越えるような場合に自分の筋力でそれに抵抗出来る状態です。明らかに可動域が狭い体の硬い人は、ストレッチを習慣化して柔軟性を高めるのは良いことです。

その際には、昔ながらの柔軟体操の様な静的ストレッチで動きづらい方向に無理やり関節を動かすよりも、反対の動かしやすい動作を繰り返す方が、関節周りの腱のバランスを整えて楽に可動域が広がります。また、本来動きたい動作を可能な稼働域内で繰り返す動的ストレッチも良いですね。

逆に解剖生理学的な関節可動域を超えて関節が動く様な場合、「関節弛緩性がある」と言う表現をします。解剖生理学的な関節可動域を越えた姿勢で体に過度な負荷がかかった場合、自分の筋力で抵抗出来ずに関節や腱を傷めてしまい、ケガをしやすいです。

関節弛緩性には、生まれつき腱や靭帯が柔らかい場合と、捻挫・脱臼・靭帯損傷などのケガや過剰なストレッチなどの後天的な理由により、関節の不安定性が生じてしまう場合があります。

【関節弛緩性の確認と対処】

手の親指が前腕に付く、肘や膝が180度以上開く、立位体前屈で掌が地面に楽に付く、上下方向から背面に回した両手で指を握れる、等の場合は、体が柔らかいと言うよりは、関節弛緩性があるので、普通の姿勢時に関節の安定性が悪くなり、肩・肘・腰・膝などに痛みが生じることもあります。

その様な場合に体が硬いからと勘違いして無理なストレッチを行うと、逆効果になります。むしろ関節の過剰な動きを減らしながら、関節周りの筋肉をゆっくり鍛えて、関節を支える腱や靭帯を強化することが有効です。

立ったまま後屈して両手を地面につけてブリッジ姿勢を取ったりするダンサーなどを見ると、凄いと思いますが、むしろ多くの関節に弛緩性がある状態であり、日常生活上は危険と隣り合わせだと言うことです。

スポーツ競技の高いパフォーマンスを実現する為には、関節を緩ませるほどの可動域が求められることも多いですが、関節周囲の腱や靭帯を十分に強化しておかないと、怪我や故障が相次ぐことになります。

【腱や靱帯は鍛えられます】

関節をスムーズに動かせるのは、関節を囲む靭帯や関節面の軟骨のおかげです。靭帯や腱はコラーゲン線維やエラスチン線維を含んでいるので、バランス良くアミノ酸を摂ることも必要ですが、運動で筋肉が強化されると、腱や靱帯もそれに合わせてより強靭になります。

とは言え腱や靭帯は回復や成長が筋肉よりゆっくりなので、急激に鍛えてしまうと、腱や靱帯が十分に強くなる前に過度な筋力がついてしまい、腱や靱帯が剥がれたり切れたりする原因になります。
健康を目的とするのであれば、限界近くの負荷を常にかける様な運動ではなく、むしろ自重でも良いので、しっかり負荷をかけゆっくり動く様な運動の方が、腱や靱帯も強化出来ますし、無理なく体力をつけることが出来ます。

【関節可動域を確認しておきましょう】

「関節可動域 一覧」でインターネット検索をすると、様々な関節の可動域が確認出来ますが、思いの他可動域が大きくないことに驚かれる方も多いと思います。「体が硬い」と言う自覚のある方は、関節が弛んでいる人を見て、「アレが柔軟な体だ」と言う勘違いをしている方も多いです。
特に必要が無いのであれば、解剖生理学的な関節可動域が維持出来ていれば十分ですので、その可動域を維持しながら、適度な自重運動で腱や靭帯を鍛えましょう。

【おまけ:骨の健康】

また、骨は重力負荷や振動刺激で強化されるので、毎日の歩行やジョギング、その場で強く足踏み、その場ジャンプ、踵を上げストンと下ろす、と言う様な日々の運動で強化出来ます。
高齢者は介護度が上がれば上がるほど、自分でこの様な運動を行わなくなるので、筋肉も骨も弱くなり関節可動域も狭くなっていきますが、何歳でも強化することは可能です。
とは言え、振動刺激が良いからと振動板に乗ったり、振動ベルトで体を揺らしたりすると、頭が揺さぶられてしまい、中長期的に認知機能低下を引き起こすリスクが高まりますので、頭は揺らさない様に気をつけましょう。

骨の為にカルシウム摂取が強く言われますが、カルシウムと拮抗するリンの過剰摂取やマグネシウム不足、ビタミンDやKの不足、などが原因のことが多かったりします。
加工食品に含まれる「リン酸塩」を様々な食品から重ねて摂ることで、骨のカルシウム分が溶け出て骨が弱くなります。牛乳や乳製品にもリンが含まれますので、添加物と合わせて摂ると骨が脆くなりやすいと言われています。
また、カルシウムとマグネシウムのバランスも大切です。理想的なバランスはカルシウム:マグネシウム=2:1と言われていますが、現代の食環境ではカルシウム添加されている物が多いので、多くの日本人はマグネシウム不足のことが多いです。精製されていない穀類、豆類、ナッツ、海藻、キノコなどに多く含まれますし、海に生息する魚介類にも多く含まれるので、活用しましょう。注意点としては、腎臓の機能が悪い方は主治医の指示を優先する様にして下さい。
ビタミンDは日光に当たれば皮下組織で合成出来ますので、毎日適度に日光を浴びるのも効果的ですし、多く含まれる椎茸やキクラゲなどのキノコ類や魚を定期的に食べることも有効です。カルシウムを腸から骨へと運ぶのがビタミンDであるのに対し、そのカルシウムを骨に定着させるのがビタミンKですので、ビタミンKも定期的に摂取する必要があります。ビタミンKを含む食材としては納豆が有名ですが、ブロッコリー、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、パセリ、紫蘇、わかめ、海苔などにも含まれますので、意識して食べると良いですね。

最期まで自分で動ける体であるために、正しい知識を持って自分の体をメンテナンスしていきましょう。

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