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Yes – Yessongs (1973)

 不可思議な詩人Jon Andersonを中心にしながら少しずつメンバーを入れかえていたYesは、クラシック出身のキーボード奏者Rick Wakemanの加入によって交響曲の要素を導入し、その作風は加速度的に進化していった。この時期の傑作といえば71年の『Fragile』と72年の『Close To The Edge』であり、それらの集大成といえるのが、ドラマーAlan Whiteを迎え満を持して発表されたこのライブ・アルバムである。Roger Deanによる内側のアートワークには、『Fragile』で砕け散った地球風の星がその後新たな惑星として根付くまでの物語が描かれている。
 Igor Stravinskyのクラシック曲をオープニングに引用し、前述のアルバムから多くのセットリストを採っていることからも、Wakemanのサウンドを中心としたシンフォニックなロックをステージで再現しようとしていたことがうかがえる。5人のメンバーのアンサンブルは圧倒的な美しさを湛えているのだが、その中でSteve Howeの荒れ狂うギターとChris Squireの轟音のベースは実にロック然としていて、Andersonの繊細なボーカルは常に妖しい雰囲気をかもし出している。
 とはいえ、このLP3枚組のディスクでさえ実は充分とはいいがたい。当時の彼らのステージ・パフォーマンスではMike Taitによる手の込んだライティングも重要な要素となっており、それを見事に捉えた同名の映画が75年に劇場公開されている。70年代のプログレ・ミュージシャンの佇まいを体現した、異様なローブに身を包むWakemanの中性的な姿、本作がお披露目となったWhiteの放つ力強いドラミングなど、すべてがいきいきとしている。ラストで流れる「Starship Trooper」のダイナミックで荘厳な演奏にこそ、完璧という言葉がふさわしいだろう。