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Mighty Baby – Mighty Baby (1969)

 アンダーグラウンド・シーンの鉱脈を掘り進める中で、ときたま時代の一歩先を行くサウンドのつまった一枚に出くわしてしまうことがある。無名のモッズ・グループThe Actionが名前をMighty Babyと改めて発表したこのアルバムは、ジャズやブルース、時にはアシッド・ロックという枠をも超えた、真に革新的な音楽探求の賜物だ。
 もともとThe ActionはPaul Wellerも熱をあげるほどのノーザン・ソウル・バンドだった。商業的な成功は無かったが音楽面での転機を迎えたのは1968年ごろで、その大きな理由に元Savoy BrownのギタリストMartin Stoneと多才なマルチ・プレイヤーであるIan Whitemanの加入が挙げられる。
 冒頭の「Egyptian Tomb」や「A Friend You Know But Never See」を聴けばわかるように、この二人がバンドにインスピレーションを与えた。前者ではWhitemanの祈りのようなサックスとAlan Kingの中性的なコーラスが最高のコントラストを生み、複雑な展開を見せる後者ではStoneのブルージーなギターが一貫してさく裂している。「House Without Windows」は典型的なヘヴィ・サイケだが、「Trials Of A City」では西海岸風のコーラスが飛び出し、「I'm From The Country」には次作『A Jug Of Love』に通じるフォーキーな雰囲気を見出すこともできる。
 ラストを飾るのは静謐な美しさにあふれた「At A Point Between Fate And Destiny」だ。ここではふたたびWhitemanの巧みなサックスがフィーチャーされている。