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Eubie Blake – The Eighty-Six Years Of (1973)

 50年間眠っていた歴史がふたたび動き出すことなどあるのだろうか?Eubie Blakeが戦前のポピュラー音楽を鮮やかに蘇らせた『The Eighty-Six Years』は、来たるべきラグタイム・リバイバルのうまいお膳立てになったアルバムである。当時Blakeは40年代に引退したはずの老ピアニストだったが、本作によってラグタイム時代の最後の生き証人として再注目されたと同時に、そのピアノの腕前が全く精彩を欠いていないことも人々を驚かせた。
 「Dream Rag」の力強いイントロが本作の第一部をけん引する。注目すべきは最も有名なオリジナル「Charleston Rag」で、彼は観客に向かってこの複雑なラグをティーンエイジャーの頃に書いたのだ、と茶目っ気たっぷりに豪語してみせる。プログラムにはScott Joplinの名曲「Maple Leaf Rag」も含まれ、「Stars And Stripes Forever」のアレンジでは勇壮なマーチのリズムを軽やかなジャズに料理している。
 本作の誠実な所は、ラグタイマーにとどまらないBlakeの作曲家としての面をしっかりとフィーチャーしているところにある。第二部は主に舞台向けに書かれた曲の再演集となっており、かつてコンビを組んでいたNoble Sissleがボーカルで参加し、お互いを懐かしみながらバラード「It's All Your Fault」や「Shuffle Along」のメドレーを聴かせる。「Blues, Why Don't You Let Me Alone」におけるブルースの枯れた味わい、そして「Blue Rag In 12 Keys」でいったんラグに回帰してから「Memories Of You」のノスタルジックなメロディに続く。この一連の感動的なクライマックスは、聴いていて思わず涙が出そうになる。