Warren Zevon – Excitable Boy (1978)
長い潜伏期間を経たWarren Zevonは、名曲「Werewolves Of London」によってようやく世間に認められた。当のZevonにとってはこれは決して練りこまれていないハロウィン・ソングであり、シングルとして大々的に押し出すものでもなかった。とはいえ、Fleetwood Macのメンバーの参加も話題を呼び自身最大のヒットとなったこの曲が、結果的にアルバム『Excitable Boy』をプラチナ・ディスクの地位にまで押し上げている。
本作は音楽的にも文芸的にもZevonの持つたぐいまれなるセンスが発揮されたアルバムだ。レコードにはノスタルジックなピアノのメロディと、武骨でつっけんどんだが温かみのある歌声が満ちている。しかしタイトル・トラックの歌詞では、子どもの純真さと残虐さを掛け合わせた容赦のないユーモアを描き出した。現代版のスリーピー・ホロウである「Roland The Headless Thompson Gunner」もそうしたナンセンスの一つに挙げられるかもしれないが、物語の舞台そのものはとても生々しい人間同士の抗争である。
シンプルかつファンキーなトレイン・ソング「Nighttime In The Switching Yard」にはドラマーJeff Porcaroが参加した。Zevonの右腕ともいえるギタリストWaddy Wachtelはもちろんのこと、他にも数多の大物ミュージシャンがクレジットされているが、特に豪華なのはJorge CalderónやJackson Browne(名盤の陰にこの人ありだ)そしてJ.D. SoutherといったZevonと旧知の仲だったコーラスの面々だ。「Excitable Boy」のバックに参加しているのはLinda Ronstadtだが、たびたびZevonの歌をカバーし、さらにWachtelも多くの録音に参加している彼女は非常にゆかりの深いシンガーといえるだろう。
最もひねくれた頑固者がいるとすればそれはWarren Zevonだ。彼の商業的成功はここで一旦のピークを迎えるが、波乱に満ちた生活を反映した独特な作風はロック界の名物の一つとなった。そしてその姿勢は遺作にして最高傑作の『The Wind』まで貫徹している。