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MJT+3 (1957)

 MJT+3は数あるジャズ・バンドの中でも、生粋のシカゴ人ドラマーのWalter PerkinsやベーシストのBob Cranshawという、とりわけリズム隊を中心にした珍しいグループだった。シカゴ・ジャズの中心を担うレーベルだったアーゴやヴィー・ジェイに名作を残したが、初期のメンバーで録音された本作は実に聴きやすく、そして親しみやすい。ブルースの街であるシカゴに深く根付いた彼らのソウルは、心地よいスイングのリズムとなって演奏に表れている。派手ではないがとても楽しい一枚である。
 後にフリー・ジャズに深く傾倒するピアニストMuhal Richard Abramsでさえ、本作でのプレイは驚くほどストレートだ。「Ray's Idea」では、まるでNicky Hillのサックス・ソロが湛えるバップの熱に浮かされたように激しいタッチを聴かせているのが印象深い。一方バラードの「They Can't Take That Away From Me」で冴えわたるのは、Paul Serranoのクールなトランペットだ。
 「No Name」や「No Man's Land」はいずれも3分に満たない小品だが、Perkinsの抑揚を巧みに効かせたドラムがセッションにメリハリを与え、音楽をうまくまとめ上げている。
 MJT+3はこのあとヴィー・ジェイに移籍すると同時にAbramsという才能が抜けるが、代わりにピアニストHarold Mabernと非凡なサックス・プレイヤーFrank Strozierらを迎えた。そして新たなメンバーで録音された60年版の『MJT+3』も、本作に劣らないファンキーさで名盤の誉を得ている。