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Helen Ward & Peanuts Hucko – With A Little Bit Of Swing (1958)

 かたやBenny Goodmanの楽団専属の歌手として、かたやGlenn Millerの空軍バンドのソロイストとして戦前のジャズ・シーンで活躍した、Helen WardとMichael "Peanuts" Huckoの共演盤。本作は60年代以降に第一線を退いたWardの貴重な録音であると同時に、名手Al CohnやBob Brookmeyerを擁した華麗なスイング・サウンドが冴えわたる一枚でもある。
 有名ミュージカルのナンバーで、半ばタイトル・トラックにもなっている「With A Little Bit Of Luck」は、実に揚々としたオープニングだ。そして続くミドル・テンポの「Lazy」で、堂々と登場したWardが芯の強いボーカルを聴かせる様は、まるで上質なショーの幕開けを観ている気分になる。
 Wardの見事な歌声は「A Foggy Day」、「I Get Along Without You Very Well」とクラシックな名曲を次々とスイングしていく。だが極めつけはLouis Armstrongの「Swing That Music」で、明るく跳ねるリズムにHuckoの流れるようなクラリネットが乗った、ジャズの享楽的ともいえる楽しさが凝縮された一曲だ。このナンバーはHuckoのお気に入りだったようで、後年のArmstrongへのトリビュート盤では、本作よりもニューオーリンズ色を強めたアレンジで再び取り上げられている。Huckoファンの思い入れの深さでは「鈴懸の径」も忘れがたい。エキゾチックなメロディに始まり、後半にかけてジャズ・アンサンブルが盛り上がっていく流れはさすがの一言だ。