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The Pirates – Out Of Their Skulls (1977)

 Phil Hardyらが編集した名著〈The Encyclopedia Of Rock〉には、The Piratesは60年代に活躍したJohnny Kiddのバック・バンドとして取り上げられており、あまつさえKiddと袂を分かった後はただの前座バンドに落ちぶれた、という冷たい言葉で項を締めくくられてしまっている。しかし、この本が編集されたのは1975年のことであり、The Piratesが偉大な傑作『Out Of Their Skulls』でパブ・ロック・シーンにカムバックするなどとは、当時の人々は知る由もなかった。
 ライブとスタジオの録音で構成されたこのレコードは、60年代前半のブリティッシュ・ビートの激しい部分だけを高純度に精製したようなサウンドで、バンドの黄金時代を支えたギタリストMick Greenの狂ったようなカッティングは今聴いても十分に衝撃的だ。ベーシストのJohnny Spenceは強烈なダミ声でボーカリストの地位を新たに開拓し、Frank Farleyのマシンのように精密なドラミングは、目まぐるしいサウンドの核をなしている。
 「Please Don't Touch」や「Shakin' All Over」は、Kidd時代のヒット・ナンバー(実際はまだ3人ともThe Piratesに加入してなかった初期の作品である)のリメイクだが、パンキッシュかつどっしりとした質感に生まれ変わっているのが印象的だ。ほかにもグルーヴィーな「Peter Gunn」や爆速のブギ「Lonesome Train」など、A面はガレージ・ロックの聖典と呼ぶべき内容に仕上がっている。
 B面も重要だ。「Drinking Wine Spo-Dee-O-Dee」はGreenの魅力が最も際立った一曲で、このギター・ソロのために本作を買っても損はないと断言できるほど。「Gibson Martin Fender」や「You Don't Own Me」などの優れたナンバーの多くは翌78年のヨーロッパ・ツアーでも披露され、ありがたいことにそのライブ・バージョンはアルバム『Don't München It!』で聴くことができる。