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Lester Flatt & Earl Scruggs – With The Foggy Mountain Boys (1959)

 このアルバムが発表された1959年はブルーグラス・ミュージックにとって大きな転換の年だった。立役者はAlan Lomaxその人であり、Lomaxは自ら主宰したカーネギー・ホールのコンサートで、それまでずっと未知なる存在だったこの南部音楽をニューヨーカーたちにアピールした。ブルーグラスこそ最もフレッシュな民族音楽である、という熱っぽい賛辞をエスクワイア誌に寄稿したのもこの年で、その中でLester FlattとEarl ScruggsのコンビがBill Monroeと出会ったときがブルーグラス誕生の瞬間であった、とも述べている。
 本作に収録されたマーキュリー期の傑作(1948年から1950年にかけて)の数々を聴けば、それが嘘でないことが分かるだろう。「Foggy Mountain Breakdown」に代表されるScruggsの軽快な名人芸のバンジョー、そして「Baby Blue Eyes」をスマートに歌い上げるFlattのボーカルは、今なおブルーグラスの教科書のようで、それらが一体となって音楽のマジックが生まれている。The Foggy Mountain Boysとして彼らを支えたバック・バンドの存在も大きく、「Is It Too Late Now?」ではBenny Simsのフィドルが哀愁たっぷりに演奏を彩っている。「So Happy I'll Be」のような繊細なコーラス・ワークも聴き逃せない。
 「Foggy Mountain Breakdown」は定番曲としてレーベルをまたいで録音され、60年代には映画の主題歌としてリバイバル・ヒットもした。また常に奏法の革新を目指したのも彼らの功績で、特に50年代半ばに加入したBuck Gravesはドブロ・ギターの滑らかなサウンドをバンドにもたらした。マーキュリー期の本作とコロムビア期のアルバムを聴き比べれば、さらなる発見を楽しめることだろう。