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断絶 / Two-Lane Blacktop (1971)

 Monte Hellmanの『断絶』は、いわゆるロード・ムービーと呼ばれるジャンルの中でも特に孤高の存在である。当のユニヴァーサル・ピクチャーは本作のプロモーションをほとんど行わなかった(おかげで興行的な失敗に拍車がかかった)が、エスクァイア誌はRudolph Wurlitzerらの書いた脚本を誌面に掲載した上で、若者の悲観主義や孤独感を描いた見事な傑作として大絶賛している。
 改造した55年型シボレーに乗り、あてもなくレースで賞金を稼ぐ若者を演じたJames TaylorとDennis Wilsonは、ともに60年代のロックの世界で成功を収めたスターでありながら、劇中ではそういった出自を感じさせない存在感を見せている。二人が旅の中で出会う少女(Laurie Bird)とGTOに乗った中年男(名優Warren Oates)は、ともに捉えがたいキャラクターだ。シボレーとGTOがワシントンを目指すレースを繰り広げる中で、少女は人間関係の空虚な距離感を象徴するように男たちの間をフラフラと行きかっている。有益な会話が交わされることはなく、心の閉塞感は晴れないままに食事、セックス、ヒッチハイクといったそれぞれの出来事が淡々と起こっていく。
 『断絶』は確かにロード・ムービーだが、本作の登場人物たちの行動には大きな目標も主張も存在していない。そして物語は旅のゴールさえも見失うが、中途で描かれる70年代初頭のアメリカの姿は途方もなくリアルだ。ただ画面に映るものだけを描こうとする姿勢は、登場人物がお互いを名前で呼び合うシーンが全く存在しないところにもよく表れている。