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Vitalic – OK Cowboy (2005)

 エレクトロ・ミュージックの世界から時折出てくるジャンルを超えた大々的なヒットには、大抵の場合確信犯的なイノベーションが含まれている。フランスのプロデューサーVitalicことPascal Arbezによるファースト・アルバムの場合は、ロックを意識した攻撃的なサウンドと、ハウスのグルーヴを大胆に掛け合わせることであった。
 「La Rock 01」やヒット・シングルとなった「My Friend Dario」は、ハードロックとエレクトロの融合が見事に成功した例と言える。特に、スピード狂のアンセムとなった「My Friend Dario」は、蠱惑的なボーカルからスイッチが入り、ムチウチになりそうなほど強烈なGでビートの渦へと引き込まれてゆく。2000年代ロック・アーティストのビジュアルを笑い飛ばすMVも話題となった。
 これだけでもフロアの聴衆の心をつかむには十分だったが、このアルバムに最も価値を与えているのは間違いなく二部作の「Poney」だ。かつて2001年にドイツのレーベルであるジゴロから、「La Rock 01」とともに発表され、耳の確かなDJに愛されてきた、まさに名曲中の名曲だ。
 アルバムにはセックスともアシッドともつかない奇妙な陶酔があふれており、またAirやDaft Punkとも異なるエッジが利いている。長い潜伏期間を経てアンダーグラウンドのクラブから突如飛び出した『OK Cowboy』は、リスナーと評論家双方から絶賛され、永遠の存在になった。