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Redbone ‎– Wovoka (1973)

 Redboneの中心であるLollyとPat Vegasの兄弟は、60年代にP.J. Probyのヒット曲「Niki Hoeky」を手掛けたことでまず有名になった。プレイヤーとしては伝説的なブルース・シンガーJohn Lee Hookerのバックを務めたこともある彼らの音楽的魅力は、メロウかつファンキーなR&Bのテイストと、スワンプ・ロックの持つブルージーな泥臭さの絶妙な配合にある。〈Redbone〉とはケイジャンの言葉で混血を意味する〈レーボーン〉の音に当てた英語の言葉遊びで、彼らの音楽性はもちろん、メキシカンやネイティブ・アメリカンを含むメンバーの出自にもピッタリな名前でもあった。
 シングル曲「Come And Get Your Love」は、かつてはラスベガス・サウンドなどと呼ばれたこともあったが、Pat Vegasのベースとエレクトリック・シタールの印象的な音色、メンバー全員による豊かなコーラスによって唯一無二の名作に仕上がっている。エスニックなリズムとストリングスを取り入れた「Clouds In My Sunshine」、ソウルに満ちたハード・ロック・チューンの「Wovoka」、そしてこれまた骨太な「23rd And Mad」。
 しかし、このアルバムを語るうえでは米国盤に収録されることのなかったシングル「We Were All Wounded At Wounded Knee」に触れないわけにはいかないだろう。こらは西部開拓時代に盛んに叫ばれた〈マニフェスト・デスティニー〉の思想や、兵士による原住民の虐殺を描いた悲痛なナンバーである。甘いラブソングも入っている本作へ、こうした重い内容の歌を入れることに難色が示されたのは無理もない話だ。結局この曲が入った『Wovoka』を聴くには、英国のヴァージョンを手に入れるしかない。
 「Come And Get Your Love」は2014年のマーヴェル映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のオープニングとして起用されたのを皮切りに多くの映像作品の中で流れており、リアルタイムでない世代にも鮮烈な印象を与え続けている。それくらいRedboneのリズムは偉大なのだ。