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Jefferson Airplane – Surrealistic Pillow (1967)

 『Surrealistic Pillow』は1960年代の西海岸におけるロック・シーンの最重要アルバムのひとつであり、Jefferson Airplaneの描く浮世離れしたサイケデリックの美学の結晶でもある。ひと癖もふた癖もあるジャケット写真(メンバーたちはちぐはぐな楽器を抱えている)の中で朗らかに微笑んでいるのがGrace Slickで、彼女は本作でThe Great Societyというグループから新たにボーカリストとして迎えられた。このThe Great Societyからは「Somebody To Love」や「White Rabbit」といった優れたナンバーもいくつか持ち込まれてシングルとなり、アルバムとともにビルボード・チャートで大きな成功を収めている。
 「Somebody To Love」は、同じく本作で新メンバーとなったSpencer Drydenの力強いビートによって生まれ変わっており、バンドの代表曲となった。Slickの歌声は「She Has Funny Cars」、「D.C.B.A. - 25」などで、Marty BalinやPaul Kantnerとのデュエットでも活きており、音楽のスタイルも実にバラエティ豊かである。
 パワフルな「3/5 Of A Mile In 10 Seconds」と「Plastic Fantastic Lover」はライブに欠かせないナンバーだが、Jorma Kaukonenのフォーク・ギターが冴えわたる「Embryonic Journey」のような美しい曲も聴き逃せない。Slickのペンによる「White Rabbit」はJefferson Airplaneのアート・ロック・グループとしての評価を確かにした名曲で、ルイス・キャロルの幻想的な世界観とアシッドの高揚を見事なバランスで融合させている。